本研究では放射線治療の線量分布の治療計画 (線量分布シミュレーション) で計算した線量分布と実際に測定した線量分布の一致度 (ガンマパス率) の絶対評価の開発を目的としている。素粒子原子核実験で因果関係のない物理量のペアの生成に用いられる event-mixing の考え方をガンマパス率に当てはめることにより、ガンマパス率予測の下限値と上限値を見積もり、その範囲内でガンマパス率予測精度の評価を行う。 今年度は、昨年度までに深層学習で生成したガンマパス率のペア (実測値と予測値) 200症例分から、高精度の予測データから低精度の予測データ (相関計数が1となる無作為なデータ) まで21段階の予測精度のデータを擬似的に生成した。これらのデータに対し、9種類の tolerance (3%/3mm、3%/2mm、3%/1mm、2%/3mm、2%/2mm、2%/1mm、1%/3mm、1%/2mm、 1%/1mm) の条件下における、評価指標を標準偏差、相関係数、平均自乗誤差、平均絶対誤差の4つに増やし、各評価指標の上限値と下限値を event-mixing で生成し、評価指標に依存しない達成スコアを開発した。 研究期間全体を通じて、event-mixing の考え方をガンマパス率に当てはめるアルゴリズムの設計、ソフトウェア開発、深層学習による予測データの生成と統計評価、さらに評価指標に依存しない達成スコアの開発まで完了した。同一予測モデルであれば tolerance に依存せず一定の達成スコアを得られることが確認された。この結果は event-mixing を用いた各評価指標の上限値と下限値の生成および今回開発した達成スコアの導出過程の妥当性を示していると考えられる。
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