研究課題/領域番号 |
21K07567
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宇都 義浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20304553)
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研究分担者 |
山田 久嗣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (80512764)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線増感剤 / アセチルグルコース / ダサチニブ |
研究実績の概要 |
本申請研究「アセチルグルコース修飾ダサチニブの分子設計・合成と放射線増感作用の評価」は,我々の過去の研究で得られた重要な知見である「アセチルグルコースを薬剤に修飾することで抗腫瘍活性および放射線増感活性を増強する」を基に,アセチルグルコース修飾ダサチニブの抗腫瘍活性や放射線増感活性の詳細な機序を明らかにし,腫瘍移植鶏卵モデルを用いて放射線増感剤としての有用性を評価して最適なリード化合物を設計・合成し,臨床利用が可能な放射線増感剤の創出を行うものである.今年度は、アセチルグルコース修飾ダサチニブの分子設計・合成と放射線増感活性、細胞内外での薬物動態を評価した。得られた結果として、2,3,4,6-Tetra-o-acetyl-alpha-D-glucopyranosyl bromideを出発原料とし、炭酸銀を用いてアセチルグルコースの開環を行い、無水コハク酸によりグルコースの1位にコハク酸を導入し、最後にダサチニブと縮合することによりUTX-136の合成に成功した。UTX-136は、2Gy、4Gy、6GyのX線に対してダサチニブより有意に高い放射線増感効果を示した。また、UTX-136は細胞内外で分解されてダサチニブが生成することが確認された。また、UTX-136の添加1時間後で39.4%のUTX-136が細胞外でダサチニブに分解し、UTX-136の細胞内取込み率は32.4%であることが確認された。さらに、UTX-136はダサチニブより1.7倍高いグルコース取込み阻害能を示した。以上の結果より、アセチルグルコース修飾はグルコース取込み阻害を介した放射線増感効果を向上させることを明らかにし、高い放射線増感効果を持つアセチルグルコース修飾ダサチニブUTX-136の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究計画としては、アセチルグルコース修飾ダサチニブを合成して放射線増感活性を評価することであるが、細胞を用いた薬物動態やグルコース取込み阻害活性まで評価できたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画に従ってUTX-136のEGFR阻害活性および腫瘍移植鶏卵を用いた放射線増感活性を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究に必要な有機合成および細胞実験に必要な試薬類が予定より少額で購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度は、鶏卵モデルによる活性評価のため動物実験用の試薬類が多く必要になると予想されるため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である。
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