研究実績の概要 |
・胸腹部大動脈瘤もしくは胸部下行大動脈瘤で手術が予定された30症例に対して超高精細CTによる撮影を行った。先行研究に倣い、局面再構成画像での連続性に基づく視覚的な4段階評価(excellent, good, fair, poor)で、excellentかgoodと評価された症例をAdamkiewicz動脈を診断可能と判定した。その結果、Adamkiewicz動脈が診断可能と判断されたのは22例であった。 ・その22例に対して3D Slicer image computed platformを用いて、Adamkiewicz動脈と鑑別診断の対象となる前根髄質静脈のセグメンテーションを熟練者が用手的に行った。その結果、Adamkiewicz動脈は22例、前根髄質静脈は20例で画像データを得ることができた。 ・使用したAIは医用画像の代表的なネットワークである3D U-netで、22症例の内17例を教師データとして学習させた。残る5例を検証データとして探索したが、診断できたのはわずかに1例(20%)のみであった。そこで、新たにAdamkiewicz動脈が診断可能と判定されたCT画像データ15症例を新たに用意して学習し、診断精度が向上するか検討した。 ・その結果、15症例中8症例(53%)でAdamkiewicz動脈を診断可能であった。この結果から、半数以上の症例でAdamkiewicz動脈の特徴的な形態(ヘアピンカーブ)をAIが診断できる可能性が確認できた。同時に学習データの増加が診断精度向の重要な要因となることも認識できた。 ・一方で、Adamkiewiczの診断(推論)ができなかったのが6例、前根髄質静脈をAdamkiewicz動脈と誤認したのが1例に認められた。このAdamkiewicz動脈と前根髄質静脈の誤診は臨床的には容認できない大きな問題であるので、対策を考えなければならない。
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