研究課題
本年度は、大脳の多細胞活動を脳局所と全脳範囲で画像計測するイメージング技術開発を進めると共に、認知症モデル動物脳の病態解析に向けた応用を進めた。1) マウス大脳回路における多細胞活動イメージング大脳の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンに対して選択的に発現誘導を可能とするプロモーターを搭載したウイルスベクターを用いて、マウス大脳におけるそれぞれの神経細胞群を明確に区別しながらカルシウムイメージングする画像計測法を実現した。タウ病態を呈する認知症モデル動物脳の回路病態を調べる手段として同技術を活用し、タウ病変形成に付随してそれぞれの神経細胞群に選択的な障害が生じる事を見出した。2) 細胞活動の全脳イメージング血液脳関門を透過可能とするアデノ随伴ウイルスベクター血清型PHPeBを利用したマウス脳への遺伝子導入の実施例を増やし、興奮性ニューロンや抑制性ニューロン、アストロサイトなどを標的として蛍光蛋白質や機能操作分子を選択的に発現誘導し、全脳範囲で画像解析できる技術基盤が整備された。また、前年度までに進捗が得られたレポーターイメージング技術を組み合わせて活用する事により、ポジトロン断層撮像法(PET)で細胞選択的なマクロイメージングをする事も可能となった。認知症モデル動物を用いた回路病態の可視化と制御に向けた取り組みにも着手し、生体イメージングと死後脳解析による予備検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、細胞選択的な遺伝子導入と多細胞活動のイメージング計測に向けた技術基盤が確立され、認知症モデル動物脳における病態解明に向けて予備的な所見も得られるなど順調な進展が得られた。
次年度は、認知症モデル動物を用いた回路病態の可視化と制御に向けた取り組みを本格的に加速させ、多細胞活動の障害と病態がどのように相関するのかメカニズム解明を推進する。
【次年度使用額が生じた理由】認知症モデル動物の繁殖状況に関し、当初予定していた実施計画に変更の必要が生じため【使用計画】最終年度の実験計画を再編し、改めて試験を実施する
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European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging
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