研究課題/領域番号 |
21K07581
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
水島 康太 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, 研究統括 (90637092)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 粒子線治療 / 放射線検出器 / イオンビーム |
研究実績の概要 |
重粒子線がん治療では数100MeV/uまで加速された炭素イオンが用いられているが、複数の核種を併用して最適化する「マルチイオン照射法」を実用化することで、膵臓がんに代表されるような再発リスクの高い難治性がんの臨床成績を向上できると期待されている。マルチイオン照射法による治療を安全に運用するためには、照射中に正しく核種が切り替わっているか、イオンビームの純度が許容値を満たしているかを監視する新たなチェック機構を治療装置に設けなければならない。本研究では入射イオン価数に対して応答が異なる2つの検出器(電離箱とファラデーカップ)を用いた新しいビーム純度測定方法の実用化を目指し、マルチイオン治療装置のビーム監視システムとして求められる性能を実現できるか検証することを最終目的としている。 研究初年度では、治療で使用されるビーム条件をもとに設計したファラデーカップを製作し、ビーム実験にて増幅回路との組合せによる応答性検証を行った。ガス電離による増幅を伴う電離箱とは異なり、ファラデーカップは入射するイオン粒子の電荷量そのものの計測となるため、10G[V/A]の高ゲインアンプを使用して電離箱と同等程度の出力強度を得ることとした。10kHzのサンプリングでは心配された出力信号の鈍りは問題とならなかった。一方で、ビーム遮断時には出力信号が数msかけて減衰するような予期していなかった現象がみられた。 研究2年目では、コレクタとなる銅ブロックとそれを覆うシールドシース間の浮遊容量に問題があると調査から考え、シールド部の改造を行った。その結果、減衰時定数は大幅に改善し影響が見られなくなった。そして、新たに設計製作した電離箱と合わせて試験用システムを構築した。実際に不純物イオンが混ざったコンタミビームを生成、比較測定し、この方法にて純度99.9%のビームを識別可能であることを検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細かな内容やスケジュールの修正・変更はあったものの、研究計画にて予定した項目を順調にクリアしており、次年度に行うべき内容や最終目標の達成まで見通しが立てられている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる研究3年目では、これまで試験利用してきた検出器をビーム輸送ライン中にある高速ビーム遮断セクションに組み込み、信号変換回路と合わせて構築するデータ収集装置に接続する。治療装置に完全に組み込むためには治療システムと同期した自動測定・解析・インターロック制御が必要となるが、本研究ではオフラインでのデータ解析までに留め、目標となる純度99.9%以上を保証するビーム監視システムの実用性を評価する。最終的に、ここまで得られた結果をまとめて学術論文に投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ収集装置を構成する機器を購入予定だったが、仕様の検討に時間を要したことにより年度内の納品が不可と判明したため、当該年度での購入を見送った。当該機器については次年度早期に購入予定である。
|