研究実績の概要 |
脳動脈瘤は成人の5-10%に認められ,その破裂はくも膜下出血を惹き起こす.前交通動脈は瘤の好発部位で,手術後に記憶障害を中心とする高次機能障害(術後高次機能障害)を生じることがある.運動麻痺がなく,退院時に予後良好と判定された症例においても高次機能障害が生じることがあり,患者のQOL低下の一因となる(Bottger S et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998).治療としては早期のリハビリテーション加え,コリンエステラーゼ阻害剤の有効性が報告されている (Benke T, et al. Eur J Neurol 2005;12:791-796). 術後記憶障害はQOLに大きく影響を与える高次機能障害のひとつである. 我々は3D-T2強調画像を用いて,術後記憶障害のある症例において前交通動脈穿通枝subcallosal arteryの灌流領域の梗塞が起きていることを報告した.さらに脳血流SPECTでの評価により,術後記憶障害の程度とsubcallosal arteryの灌流域を含む前脳基底部(rectal gyrus, anterior cingulate gyrus, subcallosal gyrus)の血流低下の程度が相関していることを報告した.近年,非造影MRIの一つであるArterial Spin Labelling (ASL)法により動脈血中のプロトンをラジオ波で磁化ラベルし,内因性トレーサーとして非侵襲的に脳血流を評価可能になった.現在ASLによる術後高次機能障害の診断と治療効果判定法を開発中である.
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