研究課題/領域番号 |
21K07589
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
対馬 義人 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20375546)
|
研究分担者 |
福島 康宏 群馬大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座等教員 (60772861)
金井 彩香 群馬大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座等教員 (10847495)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 超音波造影剤 / カーボンナノチューブ |
研究実績の概要 |
本研究では多層カーボンナノチューブを母体骨格とし、腫瘍特異的な代謝を受けて自己集合能を得る超音波造影剤の開発を目的としている。これまでに腫瘍特異的な代謝を受ける構造としてグルタチオンを、自己集合能を付与する構造としてシステインおよびシアノベンゾチアゾールの組み合わせを見出してきたが、一方で母体骨格となる多層カーボンナノチューブの水への溶解度の低さが問題として確認されていた。難溶化合物を生体に投与することは難しく、また血液クリアランスが大きく遅延する可能性が高いため血中に滞留したカーボンナノチューブがノイズとなりハイコントラストの画像を得ることが難しくなってしまう。そのため、本研究ではまずカーボンナノチューブの水への分散性を高めることを目的に、親水性修飾として適する構造の探索を行った。 親水性修飾基の候補にはアミノ基、カルボキシル基、PEG鎖などがあるが、表面にカルボキシル基を有するカーボンナノチューブ試薬が比較的容易に購入可能なことからアミノ基による親水性付与を施すこととした。 構造表面に多量のアミノ基を有するPAMAM dendrimerを親水性付与の構造として選択し、カーボンナノチューブ表面のカルボキシル基に対して第6世代型のデンドリマーをペプチド結合させた。縮合剤には1.5当量のHBTUを用い、反応は縮合に影響のない非プロトン性溶媒であるDMF中で行い、カーボンナノチューブ・デンドリマー・縮合剤を混合した後にソニケータを用いて30分間分散させ、室温にて一晩攪拌した。反応後の精製処理には分子の大きさの違いを利用し、VIVASPINによる限外ろ過を行った。 今後、得られたデンドリマー結合カーボンナノチューブにグルタチオン、シアノベンゾチアゾールをそれぞれ結合し、水溶液への分散性の確認および酵素による代謝認識の確認を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、カーボンナノチューブへの種々の修飾は体内動態試験を行った後に血中滞留性の結果をフィードバックして行う予定であったが、母体骨格となるカーボンナノチューブそのものの水に対する分散が非常に悪かったことから、動態試験を行うことが困難であると判断し、研究の初期の段階にて構造に修飾を施すこととした。そのため一部の実験・検討の順序が予定していたものから入れ替わっている。また、世界情勢の影響から予定していた試薬や消耗品の十分な購入が出来なかったことから進捗にやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は親水性修飾を施したカーボンナノチューブを母体骨格とし、代謝配列および自己集合能を示す構造を結合させた薬剤についてin vitro、in vivoの検討を行う。次年度には主に酵素による代謝について確認し、さらに代謝された薬剤が自己集合可能かを検討する。分析はチアゾリンの吸光波長や、分子径分布、あるいは吸光波長のシフトなどを用いる予定である。3年目はin vivo評価を主とし、生体内での造影効果を従来型の超音波造影剤と比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
世界情勢の影響により、試薬・消耗品・材料などについて十分量を購入できなかった。特にプラスチック製品の不足が顕著であった。繰り越し分は次年度分と併せて消耗品や試薬の購入に充てる予定である。また、この先も流通量が不足するようであれば、代替機器などの購入も検討する。
|