研究課題
本研究では,深層学習・マルチモーダル学習という工学的なアプローチを,医用画像データ・遺伝子発現データ・生化学データといったマルチモーダルな医療データに応用し,癌の層別化に関わる臨床的要因を選択する統一的な方法論を構築することを目的とする.本年度は,深層学習のモデル中に特徴の重要度を学習により獲得することができる仕組みを提案し,消化器癌の中でもっとも予後不良の悪性腫瘍である膵臓がん患者の遺伝子発現データに適用した.データ数が13名と非常に少なく,網羅的な解析はできなかったものの,膵臓がん組織と正常な膵臓組織を識別するタスク(Task1)と,1年予後に関して生存・非生存を識別するタスク(Task2)の2つの問題を考えた.Task1においてはACACB,ADAMTS6,NCAM1,CADPSという遺伝子の関連が,Task2においてはCD1D,PLA2G16,DACH1,SOWAHAという遺伝子の関連が見込まれる,との結果が得られた.The Cancer Genome Atlasのデータセットによれば,これらの遺伝子はすべて膵臓がんの予後因子であることが示されている.本研究の結果は,Scientific Reports誌に掲載された.また,脳のMRI画像中から脳動脈瘤を検出する深層学習モデルを提案し,検出される偽陽性数を削減する方法を提案した.2D情報と3D情報を統合したモデルを用いることで,2Dモデル,3Dモデルそれぞれ単独で用いる場合に比べて,特定の感度における偽陽性数を減らすことに成功した.これらの成果は,Frontiers in Neurology誌に論文として掲載されている.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,研究代表者が主に関係するものとして,実績に記述した2編の報告を行うことができた.2021年度はコロナ禍の中,研究代表者,研究分担者ともに日常業務に関しさまざまな制約が出ているものの,おおむね順調にすすんでいると考えている.
2年目である2022年度においては,以下の点についての検討を始めていきたいと考えている.・深層学習における特徴選択の手法の精度改善・癌患者の層別化を目指したPrecision medicineを実現するための特徴選択法の提案・医用画像情報を利用したマルチモーダル化
研究分担者の研究環境が変化したことに伴い,当該年度の研究費を使用することができなかった.これは,申請時には想定していなかったことである.次年度にデータの取得・管理や実験結果の評価時に必要な物品の購入に使用する予定であるが,研究分担者と相談のうえ,適切に使用することを考えている.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Frontiers in Neurology
巻: 18 ページ: -
10.3389/fneur.2021.742126
Scientific Reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-95969-6