研究課題/領域番号 |
21K07594
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 英輝 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (80444610)
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研究分担者 |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
赤坂 浩亮 神戸大学, 医学研究科, 非常勤講師 (20707161)
荻野 千秋 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00313693)
小林 加奈 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (70433282)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 放射線増感 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
我々は放射線と併用することで大量の活性酸素を産生し、放射線増感効果を著明に増加させる過酸化チタンナノ粒子の開発に成功し、世界的にも先駆的な立場で過酸化チタンナノ粒子を利用した放射線増感剤の開発に取り組んでいる。腫瘍細胞への特異的集積性の検討に関して、がん幹細胞に高発現しているCD44を認識する抗体と過酸化チタンナノ粒子を結合させることに成功し、CD44陽性細胞とCD44陰性細胞を用いたin vitroの実験系において腫瘍集積性の評価を行った。蛍光顕微鏡によるCD44陽性細胞またはCD44陰性細胞へのナノ粒子の取り込みを評価し、CD44陽性細胞内への有意なPMAP-過酸化チタンナノ粒子の取り込み量の増加を認めた。腫瘍増殖抑制効果の検討に関して、PMAP-過酸化チタンナノ粒子と放射線の併用効果をコロニーアッセイにより評価した。CD44陽性細胞においては、PMAP-過酸化チタンナノ粒子と放射線を併用することにより放射線単独または過酸化チタンナノ粒子単独よりも有意な腫瘍増殖抑制効果を認めた。これらの検討により、CD44を高頻度に発現するがん細胞へのPMAPを介して高効率な過酸化チタンナノ粒子の輸送に成功した。放射線照射されたMIAPaCa-2細胞由来のエクソソームを添加した細胞を用いると、肝転移巣形成モデルマウスにおける肝転移巣形成が抑制されることに加え、細胞から放出されたエクソソームが細胞の遊走能を低下させることを明らかにした。これらの結果を踏まえ、エクソソームのマイクロアレイ解析結果から、非照射細胞由来のエクソソームと比較し、照射細胞由来のエクソソームにて有意に発現量が変化しているマイクロRNAを遊走能、転移能制御の関連候補分子として抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
助成期間を通して、過酸化チタンナノ粒子とPMAPの融合に成功した。新型コロナウイルスの感染流行による行動制限のため、動物を用いた検討は実施できなかった。しかし、上記のin vitroの結果により、本申請期間中の目標はほぼ達成できたと言える。昨年度は、肝転移形成モデルマウスを用いたエクソソームによる肝転移形成制御実験結果およびエクソソームの添加によるMIAPaCa-2細胞の遊走能変化の検討実験を通して、細胞の遊走能および転移能制御に関連するマイクロRNAの候補を抽出することができ、当初の実験計画と比較してもおおむね順調である。今年度の実験では、これらの効果の細胞種依存性の有無の検討に加え、抽出したマイクロRNAに着目しターゲット分子を同定することで、エクソソームの細胞遊走能・浸潤能および転移巣形成制御の分子機序の詳細な検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度には、コロナウイルス感染症の影響もあり、十分な動物実験が実施できなかった。 そのため、今後には、本治療法のインビボでの有用性を明らかにしていきたい。 エクソソームが浸潤能に与える効果についても検討を行うため、MIAPaCa-2細胞に対してinvasion assayを行う。非照射細胞と比較して照射細胞由来のエクソソーム内にて有意に発現量が変化したマイクロRNAのmimicを細胞にtransfectionさせ、細胞の遊走能・浸潤能変化を検討し、細胞の遊走能・浸潤能を最も低下させたマイクロRNAを検索する。検索したマイクロRNAのターゲット分子をTargetScanやmiRtarbaseなどのデータベースを用いて同定し、マイクロRNAによる細胞内でのターゲット分子の発現量変化を生化学的手法で解析する。さらに、エクソソームによる細胞の遊走能・浸潤能制御の効果が、細胞種に依存的か否かをBxPC3やPanc-1などの細胞株を用いて同様の実験を行うことで検討する。分子機構の検討において、必要であれば、同定した関連分子を過剰発現/ノックアウトした膵がん細胞株をヌードマウスの脾臓へ注入して肝転移形成マウスモデルを作成し、解剖後に取り出した脾臓および肝臓組織に対し、HE染色および免疫染色を行い、腫瘍形成率や生存率等の解析を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成期間を通して、過酸化チタンナノ粒子とPMAPの融合に成功した。新型コロナウイルスの感染流行による行動制限のため、動物を用いた検討は実施できなかった。しかし、上記のin vitroの結果により、本申請期間中の目標はほぼ達成できたと言える。
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