研究課題/領域番号 |
21K07609
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
高井 伸彦 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (70373389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳腫瘍治療 / 粒子線生物学 / 重粒子線治療 / 認知機能障害 |
研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍は、放射線治療や化学療法の単独では5年生存率を向上できておらず、様々な治療を組み合わせた集学的治療が必要とされている。 放射線治療や化学療法のどちらにおいても、治療中や治療後における認知記憶や集中力の低下が報告されており、約8割の患者が抱える副作用 の1つである。我々は放射線照射後の早期の変化を検出し、照射後の認知機能低下との関連性を示した新たに創出した脳内毛細血管密度の画像診断技術を利用し、脳腫瘍治療動物モデルを用いて、認知機能を維持できる許容線量の推定や化学療法との組み合わせによる影響を解析する。 この研究課題では、放射線治療と化学療法の集学的治療時に生じる脳機能障害の機序を明らかにし、その防護および軽減方法を、集学的治療時の許容線量の推定ならびにNMDA受容体関連薬物による防護効果を通して明らかにする。これまでの研究成果より、脳腫瘍治療モデルの解析のため、記憶に重要な役割を持つアセチルコリン受容体に着目し、アセチルコリン受容体に対して化学療法で用いられるテロゾロミドやニムスチンを併用投与した際の受容体阻害作用を検討した。認知機能障害を誘発する数種類の抗がん剤において、アセチルコリン受容体の親和性が低下する可能性が得られた。今後、重粒子線がん治療装置を用いて、マウス脳局所に脳壊死を誘発する線量である60 Gy、腫瘍の浸潤領域となる腫瘍周辺部の予防照射線量として 総線量の1/2の線量である30 Gyを想定、晩発性の認知機能の低下が報告されている20 Gy、我々の研究結果から脳内毛細血管密度の低下を生じ させる10 Gyなどの線量を用いて、重粒子線照射単独と抗がん剤併用時との認知機能障害の違いや特徴を、照射早期(1週間後)、中期(1ヶ月後)、特に晩期(3ヶ月後)を中 心とした解析により明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響により共同研究が実施できずにいたが、これまでに作成した研究サンプルを利用し、認知機能に影響を及ぼす抗がん剤の解析を優先して実施しており、認知機能障害を誘発する数種類の抗がん剤において、アセチルコリン受容体の親和性が低下する可能性が得られたことから、放射線治療や化学療法の併用による集学的治療の基礎データを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
重粒子線がん治療装置を用いて、マウス脳局所に脳壊死を誘発する線量である60 Gy、腫瘍の浸潤領域となる腫瘍周辺部の予防照射線量として 総線量の1/2の線量である30 Gyを想定、晩発性の認知機能の低下が報告されている20 Gy、我々の研究結果から脳内毛細血管密度の低下を生じ させる10 Gyなどの線量を用いる。また脳腫瘍の化学療法で用いられるテロゾロミドやニムスチンなどの用量は、すでにMaris. S(2012)らが海 馬領域の神経発生と認知機能の影響の解析に使用された用量を用いる。これらを組み合わせた照射実験を実施し、脳腫瘍治療モデル動物を長崎 国際大学に輸送する。オープンフィード、高架式十字迷路、Y字迷路、モリス水迷路を用いて、網羅的に情動行動や認知機能を経日的に観察し 、重粒子線照射単独と抗がん剤併用時との認知機能障害の違いや特徴を、照射早期(1週間後)、中期(1ヶ月後)、特に晩期(3ヶ月後)を中 心とした解析により明らかにする。
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