研究実績の概要 |
本年度は,膜透過性ペプチド(CPP)と腫瘍標的化抗体とのコンジュゲート作成とRI標識抗腫瘍ペプチドを含む項分子ミセルの調製に関する以下の研究を行った. 1) CCAP法により抗体のFc領域特異的にRIまたは蛍光標識CPPを導入するためのツールとして,ジスルフィド架橋17残基環状ペプチド(CCAPペプチド,H-GPDCAYHKGELVWCTFH-amide,4位と14位のシステイン間でジスルフィド架橋)と4-グアニジノ-L-プロリン(GPro)を構成要素とする膜透過性ペプチド(GPro-CPP)のコンジュゲートの合成を試みた.CCAPペプチドはFmoc固相合成により調製した.クリック反応による二成分の連結を念頭に置き,CCAPペプチドのN末端にはアジド基を含むジペプチドリンカー(N3-(CH2)4-CO-NH-(CH2O)2-CO-)を導入した.次に,前年度の研究結果を踏まえ,N末端,C末端にそれぞれベンゾチアジアゾール系蛍光団とアルキン部位を導入した蛍光標識化GPro-CPPを合成し,クリック反応に付して目的とするコンジュゲートを得た.2)RI標識抗腫瘍環状ペプチドを内封した水溶性高分子ミセルの基剤として,ラクトソームを合成し,非放射性のヨウ素含有環状ペプチドを封入したミセルの調製を検討した.ラクトソームの合成は,文献法(ACS Med.Chem.Lett. 2014, 5, 873-877)に従い行った. 研究期間全体を通じて得られた結果を以下に示す. 1)ポリプロリンヘリックス型膜透過性ペプチドGPro-CPPを合成し,蛍光法により細胞膜透過性と核への局在を確認した.2)腫瘍標的化抗体とAt-211標識CPPの連結に用いるFc領域特異的環状ペプチドを合成した.3)At-211標識抗腫瘍ペプチドを内封するための高分子ミセルを合成した.
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