研究課題/領域番号 |
21K07615
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小野口 昌久 金沢大学, 保健学系, 教授 (30283120)
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研究分担者 |
澁谷 孝行 金沢大学, 保健学系, 助教 (80762509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心臓動態ファントム / 心電図同期心筋SPECT / 心機能 / 心筋血流 / 標準化 / ガイドライン |
研究実績の概要 |
本研究では,これまでに心臓部と機動部が一体化した心臓動態ファントムをより人体構造に近い三次元心臓動態ファントムの開発を行ってきたが,幾つかの課題もあった。今回,より精度を高めた新型心臓動態ファントムの改良および動作確認を試みた。 本ファントムの構造は心臓部と駆動部から成る。心臓部は小心臓および正常モデルの二種類を作成し,今回新たに開発した小心臓モデルは左室容積の正常値に関する報告から収縮末期容積(ESV)を14.5mLとした。心内膜の内側は左心室を,心内膜と心外膜の間隙は心筋壁を模擬している。また,胴体を楕円状のアクリルタンクで構築し,水を封入することで人体組織と同様な散乱体を模擬することができる。心臓部と駆動部の間にはノズルがあり,心臓部は固定具を用いてノズルに固定する。ノズルはファントムの体軸に対して30°傾斜しており,心尖部をフックに固定する構造となっているが,このフックを微調整することで心筋の壁厚を均一にし,左室容積(最大拡張末期; ED,最大収縮末期; ES)の再現性が向上した。駆動部は容積を可変させるためのシリンダーを左心室部のみに設け,シングルポンプ式に改良した。さらに,シリンダー直径を前ファントムの80mmから40mmに改良することで心拍出量の精度を高めた。心筋部の放射能濃度は,基本的に左心室のEDからES間で変化しないことから,本ファントムでは心筋部用のシリンダーを撤廃し,手動で行うよう改良した。ストロークはアナログ表示から0.01mm単位のデジタル表示に改良し精度を高めた。また,側面のコントロールパネルで心拍数を3-164bpmに可変でき,さらに期外収縮や心房細動の不整脈を7パターン模擬することができる。以上,本ファントムの改良により,心電図同期心筋SPECTから算出される様々な心機能指標値の評価を行うことが可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画は,新型心臓動態ファントムの改良および動作確認である。 当年度は企業との共同研究が迅速に進み,以下の特徴を有するファントムの改良が施された。1) 当ファントムは心臓部と機動部が一体化している。2) 心臓部は特殊二層シリコンゴムで,心外膜(アウターゴム)と心内膜(インナーゴム)の二層構造から成り,2つのゴムの間隙が心筋壁,インナーゴムの内側が左心室となる。3) 異常心筋は心臓部の心筋壁内に欠損部(ゴム:厚さ/広さ10mm)を装着し,壁運動異常を再現できる。4) 心臓部近傍には肝臓と胆嚢を模擬したファントムを任意の位置で装着できる。5) 機動部は左心室容積用のシリンダー(ステンレス製)のストローク幅によって左室への拍出量を調整することで,左心室の最大拡張末期容積(EDV: 14.5~140mL)および最大収縮末期容積(ESV: 14.5,40mL),左室駆出率(0~87%)などの指標値が算出できる。6) 心拍数は徐脈,正常脈,頻脈,期外収縮,心房細動などが設定でき,任意変更も可能である。以上の改良から予備基礎実験や臨床機による動作確認の検証をスムーズに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
三次元心臓動態ファントムの動作確認,指標値の精度および再現性の検証を行う。心機能解析評価プログラムは代表的なQuantitative Gated SPECT/Perfusion SPECT(QGS/QPS,Cedars Sinai Medical Center)を基本とし,必要に応じEmory Cardiac Toolbox,4DM-SPECT,Heart Function View/Heart Score ViewおよびCardio-REPOを用いる。上記プログラムから,正常,小心臓および病態モデルにおける各心機能指標値(EDV, ESV,LVEF,最大収縮速度,最大拡張速度,壁運動,血流増加率および位相解析など)を算出し,その値の妥当性,精度(理論値と算出値間の比較)および各プログラムの特長を明らかにする。 次に,物理的および各種補正効果の評価を行う。心電図同期心筋SPECT 撮像で重要なコリメータの種類,収集条件(収集時間,収集カウント,収集軌道,ピクセルサイズ,1心拍の分画数,心拍数など)および画像処理条件(処理フィルタ,画像再構成)の物理的条件の至適化と同時に,空間分機能,散乱線,減弱の各補正効果および部分容積効果における各指標値の精度を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍で共同研究者の使用用途(学会参加費や交通費)がなかったため,次年度に一部を充てる予定である。
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