研究実績の概要 |
心電図同期心筋SPECTによって得られる心機能指標値は重要な指標である。しかし,心機能指標値の精度が担保されているか判断は難しく,臨床で使用されている収集条件や画像処理条件で算出された心機能指標値を正当に評価できる手法はなかった。最終年度の目的は,標準化ガイドラインの指定条件を策定すること,および三次元心臓動態ファントムを用いて指定条件から得られた心機能指標値からボトムラインを設定すること,さらに,改善フローチャートの作成に着手した。使用機器は5機種(C,E,F,JおよびK社)で,データ解析はQGSを用い,EDV,ESV,LVEFおよびSV/WMを算出した。臨床条件で収集された指標値は,EDVがC:53, E:61, F:56, J:61およびK:62mL,ESVがC:27,E:31,F:27,J:31およびK:30mL,LVEFがC:49,E:50,F:52,J:49およびK:52%,SV/WMがC:4.3,E:4.9,F:4.4,J:5.0およびK:4.7mL/mmであった。指定条件で収集,画像処理された心機能指標値の平均値±標準偏差は,EDV 60.4±1.5mL,ESV 29.3±0.76mL,LVEF 51.7±1.4%およびSV/WM 4.7±0.3であった。これらの結果から,ボトムラインは指定条件の最小値でEDV 58mL, ESV 28mL,SV/WM 4.2mL/mmおよびLVEFは 49~54%と定義した。その結果,CおよびFの装置でボトムラインを満たさなかった。この原因として,前処理フィルタやコリメータの設定に問題があり,左室容積が低値を示したと考えられ,ボトムラインを満たない施設に対し,改善のためのフローチャートを示し,改善を促すことができた。以上,各施設の臨床条件とボトムラインを比較することで心機能指標値の標準化の可能性が示された。
|