研究課題/領域番号 |
21K07619
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兼田 加珠子 (中島加珠子) 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00533209)
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研究分担者 |
白神 宜史 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00560400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルファ線 / 核医学治療 / At-211 / がん治療 / トランスポーター / LAT1 |
研究実績の概要 |
申請者はがん細胞型アミノ酸トランスポーターであるLAT1(L-type amino acid transporter 1)を標的として、がん特異的なミサイル療法の開発の糸口を得た。標的であるLAT1は必須アミノ酸を含む大型中性アミノ酸を輸送するアミノ酸輸送体であり、がん種を問わず高発現が予後不良因子となる。本研究では短寿命α線放出核種であるアスタチン211(211At, 半減期7.2時間)をLAT1の広い基質選択性を利用してLAT1高親和性化合物に標識する事により、体を切らずに短時間でのがん治療が可能とする「切らない日帰りがん治療薬」の開発を目指す。 本年度はまず①LAT1高親和性アミノ酸誘導体への短寿命α線核種の標識法の最適化をおこなった。比放射能を上げる為の条件検討を進め、高効率に標識芳香族アミノ酸誘導体の取得が可能となった。次に②-1. in vitroにおけるがん特異性をhLAT1過剰発現HEK293細胞やhLAT2過剰発現HEK293細胞、各種がん細胞株を用いて、LAT1特異的取込みを確認した。その結果、既存の標識法である水銀法で取得した標識体と同等の特異性が確認できた。②-2. 標識化合物の安定性確認のため、投与動物由来体液(血液・尿)を用いたTLC解析を行った。我々の作成した標識化合物は尿として排泄されるまで比較的安定であることが確認された。③-1. 標識化合物を用いた、モデル動物(担がん)における治療効果の確認に先立ち、正常および担がんモデル動物における挙動の確認を行った。その結果、標識化合物には非特異的な集積が少ないことを確認した。③-2. 担がんモデル動物(膵がん、肺がん、骨肉腫)における治療効果の確認を行い、腫瘍増殖抑制効果があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学核物理研究センターの加速器が改修中である中、理化学研究所や量子科学技術研究開発機構よりAt-211の供給を受けて研究を進めてきた。年度後半に量子科学技術研究開発機構において火災が発生し、At-211の供給回数が激減したが、概ね当初の計画通りに研究を実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本学核物理研究センターの加速器の再稼働が予定されている。当初の予定通り④-2. 標識化合物を用いた、抗腫瘍効果と副作用の確認を実施予定である。内部被曝による遷延的な造血障害や造血への影響を確認する。また、同時に④-2. 標識化合物の効果的な投与スケジュールの検討を行い、最大効果及び副作用の少ない投与スケジュールの決定を目指す。
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