研究課題
本研究は粒子線治療の計画段階での粒子の飛行距離の不確実性を解消するための新たな取り組みである。治療室内で取得可能な粒子線を用いたイオンCT画像システムの開発を目指している。我々が開発を進めているヘリウムを用いたICTは、軽い陽子に比べて物質中での散乱が少なく、重い炭素重粒子に比べて物質中での核破砕反応の発生率も低いため、臨床応用に適した高解像度のCT画像を得るための粒子として最適である。我々は兵庫県立粒子線医療センターのシンクロトロン加速器で生成される150 MeV/uのエネルギーを持つヘリウム粒子を使用している。このシステムは、コーンビームの投影データを一度に収集する拡大照射法を採用しており、撮影時間の短縮が可能である。粒子線の照射ポートは水平に固定されているため、ローテーションテーブルを使用して、数度ごとに投影データを取得している。申請者らはシンチレーションとCMOSカメラを組み合わせた暗箱を製作し、構築された暗箱システムを用いて、小型水ファントンムを撮影した。粒子線プロジェクション画像を確認した。最初に得られた粒子線プロジェクション画像を確認し、中性子によるノイズが画像に影響することが判明した。CMOSカメラの位置をビームライン中心から 15cm, 30cmと45cmの距離を取って、撮影したプロジェクション画像のノイズを定量的に評価した。45cmの位置から得られた画像は中心位置から得られた画像より、ノウイズの量が1/3まで減少した。この結果により、構築された暗箱システムのCMOSカメラの位置を最適化し、ノイズの少ない実験画像が得られるようになった。上記の撮影条件を考慮して、小型水ファントムの投影データから3次元CT画像を再構成する実験を行った。この実験により、再構成したICTの画素値から導いた水等価厚の再現性と直線性を評価した。この結果をもとに、治療計画の精度向上に寄与することを目指している。