本研究では慢性腎臓病(CKD)モデルにおいて造影剤腎症(CIN)の病態にACE2、Ang-(1-7)、Mas受容体など新規RASペプチドがどのように関与するかを解明し、造影剤腎症予防・治療法の開発を目指すことを目的とした。 令和3年度はCKDモデルの作成を行った。SDラットに5/6腎摘を施し、CINを作成した。SDラットをsham手術のみを行ったSham群、5/6腎摘手術を施したSNx群、そしてSNxにCINを誘導したSNx+CIN群の3群に割り付けた。Sham群と比較してSNx群では血清クレアチニン(sCr)、尿素窒素(BUN)、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)、心重量/体重比が有意に高値であり、SNxがCKDモデルであることが確認できた。SNx+CIN群ではsCr、BUNが更に高値であり、CINが誘導されたことを確認できた。UACRはSNx群と比較しSNx+CIN群で更に高値であった。これらの成果は令和4年の日本腎臓病学会で発表した。令和4年度はCKD・CINモデルの腎組織を用いて、Western blotting法、PCR法、免疫染色法によりネクロプトーシスやオートファジーのマーカー、腎障害マーカーなどの分子生物学的解析を行い、CINにネクロプトーシスが関与することを見出した。 令和5年度はCKD・CINモデルを用いて利尿薬と生理食塩水負荷を組み合わせた強制hydrationの腎保護効果とその機序を検討した。先行する臨床研究と同様、強制hydrationは腎保護効果を認めた一方、驚くことに腎臓における炎症を惹起することが示された。更にWestern blotting法、PCR法、免疫染色法により新規RASペプチドのCINにおける役割について調査中であるが、期間内に終了することができなかった。現在、これらの知見をまとめ論文作成中である
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