研究課題/領域番号 |
21K07628
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
水上 慎也 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (80759340)
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研究分担者 |
原 秀剛 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (80381424)
金井 詠一 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20632219)
横山 大希 麻布大学, 大学病院, 特任助手 (60823812)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線CT / 生体内部温度 / CT based thermometry |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの目的は、X線CT装置を用いて人体内部の温度分布を可視化するCT-besed thermometryを開発し、温度によって疾患や治療効果を評価する新たな画像診断法の可能性を明らかにすることである。本年度は水ファントムを用いてCT-based thermometryの温度測定精度(温度分解能)を測定し、精度向上について検討した。 温度分解能は、CT画像ノイズの増減により変化した。温度分解能を低下させる原因は、物体の検量線(CT値-温度変換テーブル)を用いてCT画像を温度マップに変換する際に、CT画像のノイズ成分が温度ノイズに変換されることが原因であった。しかし、撮影条件の改善では温度分解能の大幅な改善は見られなかった。最も温度分解能が改善したのは、メディアンフィルタを用いた平滑化処理であった。平滑化処理のカーネルサイズを調節することで、空間分解能の低下を抑え、温度分解能を向上することが可能であった。さらに、温度カラーマップで、温度分解能の温度を同一色で表示することで温度の誤認識を低減することが可能であった。本検討における水を対象とした温度分解能は約6℃であった。現時点では、1~2℃のごくわずかな温度変化は高い精度で測定することは困難であるが、生体の温度を大きく変化させるラジオ波焼灼療法(RFA)やハイパーサーミアといった熱を利用した治療において、投与温度の確認や治療精度の向上に貢献する可能性が示された。なお、本検討で明らかとした温度分解能の測定法および温度分解能を用いたカラーマップについては、日本国特許に出願済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響もあり、当初予定していたブタ生体を対象とした実験は実施できなかった。しかし、CT-based thermometryの基礎検討を行い、本技術の特性について十分な検討ができた。本技術における温度分解能の測定法と特性、画像表示への適応については、過去に報告が無く、新規技術として日本国特許への出願も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度実施できなかったブタ生体の実験は過去に2度実施しているため、過去のデータ(画像)を利用して温度分解能を適用した温度マップの検討を行う予定である。 また、現在使用しているX線CTの撮影条件は、臨床利用を考慮して設定していたが、CT画像ノイズと温度分解能の関係をより詳細に検討するために、X線被ばくを考慮しない撮影を行う予定である。現状よりX線の出力を高めることは困難であるため、同一撮影を複数回行い、加算平均することでノイズの影響が少ない画像を作成することを計画している。この検討によりCT-based thermometryの到達目標となる温度分解能と、必要となるCT画像の画質が判明すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり、当初予定していたブタ生体を対象とした実験は実施できなかった。本年度の予算は動物実験費用としていたものもあり、予算を執行できなかった。また、学会参加用の旅費についても、学会がオンライン参加が可能となったため執行しなかった。 次年度は、画像処理ワークステーションや精度評価ファントムの作成、論文投稿費として予算を執行する予定である。
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