「ABC現象を回避するポリグリセロール修飾ラクトソーム開発」を重点的実施した。 直鎖型ポリグリセロール(lin-PG)修飾ポリ乳酸についてナノ粒子への導入を検討した結果、lin-PG表面修飾ラクトソームの調製が可能であった。10%lin-PG修飾体は粒子径が52nm、50%lin-PG修飾体は130nmの粒子を形成することが示唆された。ELIZA法を用いた評価実験では、マウス投与後の血中抗ラクトソームIgM抗体量を測定した結果、10%修飾体は抗体量が有意に減少したが、50%修飾体の抗体量は変化を認めなかった。10%修飾体のI-125標識物調製は精製に課題が残った。インビボ分布を調べた結果、10%修飾体はABC現象を軽減していることが強く示唆された。これらの評価は、腫瘍モデルを用いて詳細を検討する必要がある。 その他のABC現象軽減機能性ポリマーとして、ポリカルボキシベタイン(PCB)ポリマーおよびポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーの合成を検討した。ポリカルボキシベタイン(PCB)ポリマーは合成が可能であること明らかになり、今後、ラクトソームへの修飾と抗体量、ABC現象の軽減を評価していく予定です。また、ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーは合成条件をさらに改善する必要があるが、マレイミドPLLAを用いてモデル実験の結果、PVP-PLLAポリマーの合成は可能であることが示唆された。今後、さらに条件検討が必要である。 ABC現象軽減のため構造変化の妥当性は、今後、補体産生量の評価やがん集積性も合わせて評価していく予定である。またPVP基導入に用いるマレイミドーチオール反応は、ラクトソームに他の機能性官能基を導入する方法としても応用できる可能性があり、ラクトソームを構成する両親媒性ポリマーの直接標識化や、腫瘍認識能向上のための官能基修飾にも応用できると考えられる。
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