研究課題/領域番号 |
21K07659
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
謝 琳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (30623558)
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研究分担者 |
胡 寛 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 研究員 (00827678)
藤永 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (70623726)
破入 正行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (80435552)
張 明栄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 部長 (80443076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 代謝型グルタミン酸受容体1型 / Radio-theranostics / PET診断薬 / α線治療薬 |
研究実績の概要 |
プレシジョン・メディシンの実現に向けたがんの診断と治療を合わせたRadio-theranosticsの開発競争は巻き起こっている。申請者らは、これまでに多くのがん種に異常発現している癌蛋白質代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)を標的に、同一低分子化合物の骨格を持つ放射性薬剤18F-FITMと211At-AITMを開発し、18F-FITMがPET診断薬として、211At-AITMがα線標的アイソトープ治療(TRT)用の薬剤としてそれぞれ有望であることを実証した。今回の研究では、日本発のRadio-theranostics創薬成果の実用化を目指し、オリジナルのPET診断薬18F-FITMをα線治療薬211At-AITMとセットにし、がん種横断的なα線Radio-theranosticsシステムを確立することを目的とする。 今年度では、申請者は211At-AITMを用い、複数のヒトがん種に対して治療検証を行った。ヒトがん細胞株メラノーマA375、BowesとA2058、乳がんMDA-MB231、すい臓がんMIA PaCa2とPANC1、大腸がんDLD1を入手し、mGluR1遺伝子の発現を確認した上、担がんモデルをそれぞれ樹立し、治療効果及び安全性等の評価を行った。その結果、生理食塩水投与のコントロール群に比べ、211At-AITMによる静脈内単回投与群では、mGluR1陰性のA2058、PANC1担癌モデルに有意な抗腫瘍効果を示さなかったが、mGluR1陽性のMDA-MB231、MIA PaCa2、A375、Bowes及びDLD1担癌モデルには、顕著な抗腫瘍効果を示した。一方、有害事象である体重減少、血液毒性等は認めなかった。以上の結果から、211At-AITM TRTは、mGluR1を有する複数のがん種に対し安全かつ効果的な治療法として期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)を標的とする数種のヒト担癌モデルを構築し、がん種横断的に治療を検証することができた。α線治療薬211At-AITMは、複数のmGluR1陽性腫瘍に対して、副作用をほぼ示さず、がん細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。これらの結果はmGluR1を標的とするがん種横断的なRadio-theranosticsシステムの臨床開発に大きいヒントを与えた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度より得た結果を基づいて、次年度からmGluR1陽性の担癌モデルを用いて、211At-AITMの治療を行うために、18F-FITMの体内動態で代替評価できるかどうかを検証する予定である。
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