研究課題
本研究では、最新の標識化学の知見を活用して、「AQP4に対する高感度かつ選択的な高品質のPET薬剤の実用化」を目的としている。AQPに対するPET薬剤として[11C]TGN-020が提案されているが、比放射能が低く極めて収率が悪い(1%以下)のため、標識合成法の改良を検討している。昨年度は、Cu(I)触媒を用いたボロン酸エステルの[11C]カルボキシル化反応を用いて、中間体の[11C]ニコチン酸をおよそ30%の収率で得ることに成功した。しかしながら、次のアミド結合生成反応が進まず、目的物を得られなかった。そこで、本年度はアミド結合生成反応について詳細を検討することとした。まず、縮合剤の検討を行ったところ、DMT-MM(100%)>EDC(48%)>HATU(4%)となり、縮合剤としては、DMT-MMを選択することとした。次に、一段階目のカルボキシル化反応から持ち込まれる触媒の影響を調べたところ、K222、KF、TMEDA存在下で、アミド結合生成反応が<1%に低下することが判明した。これらの第一段階の反応から持ち込まれる触媒について、K222とKFは1/10、TMEDAは1/00までモル比を低下させるとアミド結合生成反応は阻害されなかったことから、固相抽出による中間体の粗精製が効果があると思われた。一方、TGN-020は脈絡叢に発現するAQP1に対しても親和性があるため、選択性の高いリガンドとしてARE-270の表s記号性を進めている。現在までに、標準品ならびに標識前駆体の合成を終了している。また、これに加えて新たに、TGN-020の18F標識を意図した誘導体の設計を行い、標準品の合成に着手した。評価系として用いるAQP4KOマウスの導入の準備を開始し、必要な手続き(遺伝子組換え実験申請、動物実験申請)を終えた。
3: やや遅れている
[11C]TGN-020の合成に関して、第二段階の反応条件の検討に時間を要している。[18F]ARE-270の標識合成に必要な基盤技術[18F]トリフルオロメチル化の確率に時間を要している。
令和5年度内に[11C]TGN-020の自動合成装置による自動化を完成させ、新たに導入するAQPKOマウスでのPET撮像実験を行う。[18F]ARE-270のマニュアル合成による標識合成を達成する。
動物実験まで到達できなかったため、物品費に未使用分が残った。今年度はAQP4KOマウスを導入するため、その費用を使用する。また、COVID-19の影響により、引き続き予定されていた国内学会や国際学会への参加を見送ったため,旅費を使用しなかった。今年度は渡航制限など緩和されたため、学会参加費・旅費の増加が見込まれる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件)
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