研究課題/領域番号 |
21K07672
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梁川 雅弘 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (00546872)
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研究分担者 |
森井 英一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10283772)
鈴木 裕紀 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (20845599)
富山 憲幸 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50294070)
木戸 尚治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (90314814)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超高精細CT / 肺腺癌 / PD-L1 / 人工知能 / Vision Transformer / LIME |
研究実績の概要 |
本研究は、面内・体軸方向ともに従来CTの2倍の空間分解能を有する超高精細CTにて撮像した肺癌の画像データから、診断能の向上に役立つ主観的および客観的画像学的因子を探索し、肺癌の的確な診断や治療方針の選択に役立つ画像解析法の確立を目指すことである。具体的な研究項目は、①肺癌の超高精細CT画像所見と病理組織像や遺伝子情報との詳細な対比②超高精細CT画像データを定量解析するための人工知能ベースのソフトウェア開発③病理学的因子、遺伝子因子、予後因子に関連する画像所見および定量因子の究明、の3つである。 1. 超高精細 CT 所見の評価および遺伝子の免疫染色を含めた病理学的因子の評価 初年度に収集した85例の超高精細CTデータを用いたCT-based radiomics解析を行い、肺腺癌のsubtypeの中で予後不良なもの(micropapillary, solid)との関連性およびPD-L1(programmed cell death1 ligand1)との関連性を機械学習や統計ソフトを用いて検討した。更に、当科に保管されている伸展固定肺を超高精細CTで撮像し、超高精細CT画像と組織像を直接対比し、微細構造の描出能や結節の検出能についても検証を加えた。 2. CT画像所見の評価と人工知能の構築 超高精細CTデータ、従来CTに相当する画像データ(NRsimulation)を用いて、人工知能の着目部位の検討を行うため、Vision transformerを用いた人工知能解析モデルを構築した他、類似のモデルとしてLIMEの構築も行い、上記の85例において、上皮内癌(AIS)、微少浸潤性腺癌(MIA)、浸潤性腺癌(IVA)の分類と人工知能の診断時の着目部位を視覚化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高精細CT画像データの抽出および従来CTに相当する画像データ(NRsimulation)の再構成も完了し、それらを用いたCT-based radiomics解析も施行できた。更に、伸展固定肺を超高精細CTで撮像し、その画像と組織像を直接対比することで、微細構造の描出能や結節の検出能についても検証を加えることができた。また、前年度に引き続き、Vision transformerを用いた新しい初期モデルの検証を行った他、類似のモデル検証としてLIMEの構築も行った。上皮内癌(AIS)、微少浸潤性腺癌(MIA)、浸潤性腺癌(IVA)の分類において、人工知能が診断時に着目した部位を視覚化することはできたと考える。しかしながら、Vision transformerやLIMEモデルの構築は当初の計画以上の進捗と判断できる部分ではあるが、ともに詳細な解析はまだできておらず、今後進めていく予定である。以上より、本研究は、ほぼ順調に進行中と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.超高精細 CT 所見の評価および遺伝子の免疫染色を含めた病理学的因子との関連 最終年度の2023年度は、超高精細CTデータを用いたradiomics解析と肺腺癌病理組織像や遺伝子因子に関連する画像学的因子の解析結果をまとめ、論文化を目指す。 2.人工知能の診断過程の解析 人工知能の診断過程はブラックボックスであり、解決すべき課題の一つとされている。Vision transformerやLIMEの構築により人工知能の着目部位を視覚化するに止まった状況であるが、最終年度の2023年度は、着目部位を可能な限り解析し、人工知能の診断過程の解明に繋げたい。人工知能の着目部位を超高精細CT画像と対比することで、その特徴量の抽出や人工知能の更なる精度向上に繋げることができるかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、主に、追加検証のための、トリミングナイフ一式、パラフィンブロック作成およびHE染色標本作成のため物品費に計上した。また、超高精細CTの画像評価や人工知能解析に関する本研究の成果の一部は、国内学会、Web学会、国際学会にて発表を行ったため、その旅費に計上した。尚、繰り越し金に関しては最終年度に研究成果発表のための海外出張費などに計上する予定である。
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