研究課題/領域番号 |
21K07687
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 英樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (80425610)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 陽電子放射線断層撮影 / 炭素11 / 標識化合物 / 二硫化炭素 / チオウレア |
研究実績の概要 |
現在、陽電子放射線断層撮影(PET)法は疾患診断だけでなく、簡便に極微量で薬物動態を測定できることから創薬研究において非常に重要な手法となっている。しかしPETプローブ合成に使用される炭素11標識前駆体は主にサイクロトロンから直接回収される11C標識-二酸化炭素(11CO2)またはそれを効率よく変換した11C-ヨウ化メチル(11CH3I)が使用されている。近年、申請者は新たに炭素11標識前駆体として11C標識-二硫化炭素(11CS2)を合成し、分子内にジスルフィド結合を持つ11C標識-ジスルフィラム(酒避薬)の合成に成功した。二硫化炭素は有機溶媒として使用される安定な化合物であるが塩基性条件下では反応性が高く容易にチオアミド、チオウレア、チアゾール、イソチオシアネート、ジチオカルバミン酸などに変換される。そこでより多くの種類の薬剤を11C標識化するため11CS2用いた新規の11C標識化合物の合成を計画した。本年度はまず11CS2を11C標識チオウレアに変換し、11C標識チオウレアを用いた合成を行うことを目指した。まず、上記のように、既に確立した手法で11CS2を合成し、これをアンモニア水に引き込むことで目的とする11C標識チオウレアへの変換を試みた。その結果11C標識チオウレアは効率よく生成した。そこで11C標識チオウレアを用いた標識合成を行うため溶媒を留去し、3,4-ジクロロベンジルブロミドと反応させ、アクチン様細胞骨格タンパク質MreBの阻害斉A22(S-ベンジルイソチオ尿素)へと変換することを試みたが、目的物が得られなかった。溶媒を留去の際の加熱により11C標識チオウレアの構造が変化したことが原因と考えられ、今後反応条件の検討が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では初年度で、11C標識チオウレアの合成が出来れば、その後の標識合成は順調に行くと考えていたが、11C標識チオウレアの合成に必要なアンモニア水の除去の手法に検討が必要になったため、当初計画よりやや遅れてしまった。しかしこの問題が解決できれば今後の研究は問題なく進行できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度で合成が達成できた11C標識チオウレアを用い様々な標識合成を行う予定である。まずは11C標識チオウレアを用いて11C標識S-ベンジルイソチオ尿素を合成できる条件検討を行い、これをH3Rアゴニストのimetitの標識合成に適用する。これらが完了すれば、11CS2を用いた非対称11C標識ウレアの合成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はコロナの影響で物資の調達が一部困難であり、また参加予定学会が中止などにより予算の執行が出来なかった。今年度は早めに調達および代替案で対処する予定である。
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