研究課題
大脳皮質基底膜症候群を呈する大脳皮質変性症(CBD-CBS)とリチャードソン症候群を伴う進行性核上性麻痺(PSP-RS)の鑑別は特に初期においては臨床症状や病態が密接に重なるためしばしば困難である。我々はクラスタリングと疾患進行モデリングを統合した新しい教師なし機械学習技術であるSubtype and Stage Inference(SuStaIn)を用いて、横断的データに基づく純粋なCBS患者とPSP-RS患者の脳萎縮の時間的進行パターンの違いを検討した。令和4~5年度に予定していた次世代的定量MRIや臨床データを用いた脳神経変性疾患の進行パターンの推定の検討を進める予定であったが、利用可能なデータが多施設で取得されたものでありMRI機種や撮像プロトコルが異なるため、疾患による変化と施設間差による影響を分離できない問題があった。この「施設間差による影響を除去(調和)」するため、拡散MRI定量値(拡散テンソルイメージング・神経突起イメージング・diffusion tensor image analysis along the perivascular space [DTI-ALPS])の調和を検討した。また、多施設データを用いた場合でも施設間差による影響を除去して、疾患による影響を検出可能であることを示した。さらに、マルチサイト研究における dMRI メトリックのばらつきが、精神疾患や神経変性疾患の微細な病理学的変化の検出を困難にしていることから、大規模な移動被験者データセットを用いて、白質領域における DTI および NODDI メトリックの調和のためのComBatとTS-GLMの性能を検証した。
2: おおむね順調に進展している
当初、令和4~5年度に予定していた次世代的定量MRIや臨床データを用いた脳神経変性疾患の進行パターンの推定の検討を進める上で問題となっていた「施設間差による影響を除去(調和)」を解決するため、拡散MRI定量値の調和を検討し、多施設データを用いた場合でも施設間差による影響を除去して、疾患による影響を検出可能であることを示した。本研究の成果として、DTI-ALPSの調和について論文化し(doi: 10.1007/s11604-023-01415-0.)、拡散テンソルイメージング・神経突起イメージングの調和についても論文化した(doi: 10.14336/AD.2023.1020.)。
疾患進行パターンとそのサブタイプ分類が可能な教師なし機械学習SuStaInを用いて、次世代的定量MRIや臨床データを用いた脳神経変性疾患の進行パターンの推定の検討を進める。次年度への繰り越し金は論文投稿時の英文校正費、オープンアクセスジャーナルの掲載費などに使用する予定。
国内学会(2件:100,000円)と国際学会(1件:300,000円)の現地参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症まん延防止のためWeb参加に変更し旅費が必要なくなったため。次世代的定量MRIや臨床データを用いた脳神経変性疾患の進行パターンの推定の検討を進める。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
Japanese journal of radiology.
巻: Nov;41(11) ページ: 1226-1235
10.1007/s11604-023-01454-7.
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10.14336/AD.2023.1020.