研究課題/領域番号 |
21K07691
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | cGAS / 放射線抵抗性 / アポトーシス / 細胞老化 / 分裂期崩壊 / p21 |
研究実績の概要 |
cGAS (cyclic GMP-AMP synthase) は病原体関連分子を認識するパターン認識受容体の一種で,加えて近年では,免疫細胞内のcGASの活性化が抗腫瘍免疫誘導に重要であることが示されている。一方,癌細胞内でのcGASの活性化が癌治療効果に及ぼす影響に関する報告は限られている。研究代表者は公共データベースを用いた解析によりcGASの発現と頭頸部扁平上皮癌患者の予後不良等との関連性を見出すとともに,in vitroにおいてcGASが頭頸部扁平上皮癌細胞の放射線抵抗性に関与することを見出したが,そのメカニズムは未解明である。本研究では,cGAS刺激因子と放射線の併用による抗腫瘍免疫活性を兼ね備えた効果的な癌放射線治療戦略に繋げるための基盤研究として,放射線の抗癌効果の妨げとなるcGASが介在する癌細胞の放射線抵抗性機構を解明する。 本年度は,1年目に明らかとなったcGASの発現抑制による放射線応答が頭頸部扁平上皮癌細胞株の種類(SAS及びCa9-22)によって異なる原因の解明を目指した。細胞老化関連因子p21に着目して解析を進め,以下を見出した。(1) cGASの発現抑制により放射線誘発細胞老化とアポトーシスの増加が起きるCa9-22では,照射後のp21の発現増加がcGASの発現抑制により促進される,(2)細胞老化及びアポトーシスではなく,放射線誘発分裂期崩壊がcGASの発現抑制により促進されるSASでは,cGASの発現抑制によるp21の発現促進が起きない,(3) cGASとp21の発現を抑制したCa9-22では,cGAS単独の発現抑制時に観察された放射線誘発細胞老化とアポトーシスの促進が消失した一方で,SASと同様に放射線誘発分裂期崩壊の促進が観察された。以上の結果より,細胞株の種類によってcGASを介した放射線応答が異なった原因として,p21の応答性の違いが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞の放射線応答におけるcGASの役割及びその機構の一端を明らかにした。その成果を国際学術誌『Cells』に投稿し,採択,掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,cGASを介した放射線応答制御機構をより詳細に解析するとともに,cGAS刺激因子による放射線抵抗性誘導機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用していた装置が故障したため,新規装置の購入のために前倒し申請(40万円)を行ったが,負担額がより予定していた額よりも少なくなったため,その残(6万円)を次年度に繰り越した。また,装置の故障及び納期までに時間を要したため,一部実験を次年度に行うことにした。その実験に係る消耗品費(232,515円)を次年度に繰り越した。
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