研究課題/領域番号 |
21K07696
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
五東 弘昭 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80635235)
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研究分担者 |
草野 陽介 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (40619665)
蓑原 伸一 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60239332)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゲル線量計 / 重粒子線 / 放射線治療 / 3次元線量分布 / 放射線の見える化 |
研究実績の概要 |
2022年度は、課題であった重粒子線の進行方向についての精度向上を検討した。検討方法としては2021年度までに得たビーム進行方向や進行方向垂直面における発色量と・OH濃度の関係から、色素ゲルの発色量と吸収線量の乖離は・OHの再結合が影響していることを考察したことを利用した。具体的には、再結合が生じない場合の・OH濃度などを求めこの値を補正係数として発色量に乗じる手法を検討した。その結果、色素ゲル線量計で大きな課題であったビーム進行方向のクエンチによる測定値の大幅な低下を補正することが可能なことを見出した。 開発したゲル線量計の新しい使い方として、重粒子線照射中の吸収線量をリアルタイムで評価する方法(in situ観察)の開発にも着手した。この手法では、開発した・OH濃度による換算係数を治療計画線量の補正に使い、照射中のゲル線量計の発色量を評価するものである。光学CTに色素ゲル線量計を取り付け、治療台に載せ重粒子線を照射しながら撮影した色素ゲル線量計が発色していく過程を解析し、時間経過による線量の増加量の測定を行った。その結果、経時変化の観測や従来の光学CTでは不可能であった照射後、即座の撮像が可能となった。 移動性標的の計算による吸収線量評価手法の開発を行い、ゲル発色量からの移動性標的の吸収線量の評価に適用した。また、 移動性標的に対してRe-Scan回数や移動量が吸収線量分布に及ぼす影響を考察した。実験の結果、標的の移動量が5 mmでは色素ゲル線量計で読み取れる限界以下の誤差しか生じていないことが確認された。さらに、Re-Scan回数を少なくしても、誤差が生じないことが確認された。また、上下駆動の許容限界を推定できた。今後、人体の動きを模擬した照射試験により、線量分布への影響を確かめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動体照射の開発をすすめており、Re-Scan回数や移動量が吸収線量分布に及ぼす影響を考察することができた。また、新たな試みとしてリアルタイムで評価する方法(in situ観察)を行うことができた。一方、人体という複雑な不均質媒体の線量分布の評価と治療計画への適用を行うための材料組成の選定までは行えていない。したがって, 総合的に見るとやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、遅れを取り戻すべく研究を進めていく。また、最終年度なのでこれまでに得られた成果をまとめていく予定である。 これまでに開発した色素ゲル線量計に関しても補正係数のさらなる最適化や, 人体に近い不均質媒体の線量分布を測定するための様々な組成の検討や作製手順の一般化など、まだ改良の余地が多分に残されている。それらに関する実験を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期的な世界的な半導体不足の影響があり、光学CTに当初搭載予定であったカメラの納期や型の変更などがあった。このため、予算が次年度にずれ込んだ。
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