研究課題
炭素イオン線治療は、X線や陽子線に比べて殺細胞効果が高い反面、正常組織への線量漏洩がもたらす副作用も大きい。現在の臨床では、設定されている難治性固形癌の至適線量の多くが、近接した正常組織(リスク臓器)の耐用線量によって決まっている。近年、スポットスキャニング照射法の出現により不整形照射野への線量集中性は改善されたが、依然として照射野辺縁に無視できない線量域が形成されてしまう。この改善策として、強度変調炭素イオン線治療の開発が望まれている。しかし、同じ粒子線である陽子線と比べて要求される技術の高さから、正確な生物学的基礎データの収集が難しく開発が難航している現状がある。本研究課題の目的は、独自の照射系の確立と細胞・動物実験を駆使し強度変調炭素イオン線治療を世に出すための生物学的根拠を提示することにある。本研究が、世界をリードする日本の重粒子線治療の更なる治療成績向上と、これまで炭素イオン線治療が有効な腫瘍と分かりながらも治療を断念せざるを得ない症例に対する解答への一助となる。これまでに、炭素イオン線照射を用いた強度変調放射線照射システムを開発し、その堅牢性を物理面、生物面の両方より確認してきた。さらに、患者の治療システムに組み込むことに成功し、社会実装を果たした。
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PLOS ONE
巻: 18 ページ: e0288545
10.1371/journal.pone.0288545