申請者らは乳房や甲状腺領域の超音波elastographyを行う際に体表とほぼ同じ音響インピーダンスを持つ音響カプラを開発した。これをシート状に加工した。四角形の鋳型を作成し、音響カプラと同じ製法で作成することが可能であり試作品を製造した。これまで描出能、耐久性について検証し診断に耐えうるものであった。 作成したシートの音速、音響インピーダンス、減衰を計測した。これによりパラフィンとスチレン系樹脂の至適配合率と厚みを決定した。さらに腫瘍を模した球体を埋め込んであるファントムを使用し、ゼリーを使用した場合とシートを使用した場合で腫瘍描出能を比較した。申請者が開発した音響カプラを用いた場合と用いなかった場合で腫瘍の描出能は変わらなかった。 次いで実際に生体に対してエコーゼリーを使用した場合とエコーシートを使用した場合で、腫瘍などの描出能に差がないか臨床試験を行った。これについてもゼリーを使用しなくても明瞭な描出が得られ、ブローブの走査性は失われなかった。 次にシートに対して着色料にて色付けし透明性を低下させた(女性などへの配慮のため)。着色料の濃度を変え4段階でサンプルを作成し構造物の確認、プローブの操作性、破損状態を検証した。いずれのシートにおいても実用可能であることを確認し得た。以上よりパラフィンとスチレン系樹脂を適切に配合した音響カプラの使用により、超音波画像のクオリティを落とすことなく、院内感染を防止しうることが示唆された。
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