研究課題
昨年度、肩関節MRIと膝関節MRIにおいてZTEシーケンスの至適撮像条件を作成したが、今年度はさらに仙腸関節MRIにおいてZTEシーケンスの至適撮像条件を作成した。それを臨床応用するために、脊椎関節炎患者の日常診療のMRIへの組み込みを開始し、症例集積を始めたところである。昨年度から引き続いて、肩関節MRIの日常診療への組み込みを開始したが、CTもMRIも1か月以内に撮像され、日常診療MRIにZTEシーケンスの追加撮像を行うことに書面で同意をいただいた36名を対象として本年度は画像解析を行なった。肩関節脱臼患者での関節窩骨欠損率の検者間信頼性(ICC)はCTが0.93、MRIが0.92とほぼ一致する結果であった。全36例中、骨性Bankart lesionはGold standardであるCTにおいて18例(50%)で見られ、ZTEシーケンスでは13例(72.2%)で描出できた。それらMRI-ZTEシーケンスで描出できなかったものはほとんどが10mm以下の小さな骨片であった。CTにおける骨性Bankart lesionの骨片の長径は、ZTE 元画像で骨片を認める群と認めない群の間に有意差を認めなかったが(中央値 15.1 [最小9.1 - 最大24.1] vs 11.0 [4.8 - 37.7]、p = 0.2)、ZTE VR像では骨片を認める群と認めない群の間に有意差を認めた(中央値 15.3 [最小9.1 - 最大24.1] vs 7.2[4.8 - 10.3]、p < 0.01)。これらのことはVR像を作成するときに微細骨片が骨として認識されていない可能性があり、画像処理の方法論の再検討が必要と思われた。また、研究分担者とともにCTとMRIの相同性を評価するためのレジストレーションをはじめとする方法論の検討、およびMRIの通常画像からCT like imageあるいはCT画像を作成できるように、深層学習などのAI技術を用いて構築する検討を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
ZTEシーケンスを用いたMRIシーケンスの撮像が臨床現場でできており、順調に症例集積ができている。脊椎関節炎における仙腸関節MRIにおいても、撮像条件の設定が終了し、症例集積を開始しはじめた。コロナ禍が収束に向かっており、学会や研究会での発表についても順調に行うことができるようになってきた。以上より、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
次年度から研究代表者の所属先が変更になるが、現施設でIRBを含め前向き研究として進行している臨床研究は分担研究者、研究協力者とともに継続し、基本的な計画通りに研究を継続して進める予定である。ひきつづき、症例集積をすすめると同時に、相同性の検討、機械学習・人工知能による関節MRIから関節CTの作成などの課題についても、分担研究者とともに研究を進めていく。さらに仙腸関節においてもプロトコールを作成したため、こちらも症例集積を進め、解析を施行したい。ZTE-MRIシーケンスの問題点の洗い出しも同時に進めており、英文論文作成を行って行く予定である。
物品費においてデータ解析用のノートPCを予算に計上していたが、他の研究費で購入したPCで代用できたため、使用額に差が生じてしまった。本年度は研究発表および論文化にあたって必要となる資金に充てたいと考えている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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