研究課題/領域番号 |
21K07715
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 仁 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院, 副病院長 (70344918)
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研究分担者 |
丸尾 和司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10777999)
中村 和正 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20284507)
吉岡 靖生 公益財団法人がん研究会, 有明病院 放射線治療部, 部長 (30379242)
奥村 敏之 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50241815)
石山 博條 北里大学, 医学部, 教授 (60343076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 線量分割法 / 寡分割照射 / 線量体積ヒストグラム / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
陽子線治療では異なる3つの線量分割における急性期有害事象とQOLを調査し、通常分割法である78Gy/39回法(1回2Gy)と比較して、70Gy/28回法(1回2.5Gy)、63Gy/21回法(1回3.0Gy)のIPSSおよび急性障害には差がなかった。短期経過観察であるが、陽子線治療の63Gy/21回を標準的な分割法の一つとして普及させていくことの合理性が示された。重粒子線治療では、照射技術の違いによる51.6Gyの安全性と有効性を検討し、現行のスキャンニング法での照射は、従来のPassive法と比べて統計学的な差がなかったことから、現行の治療を継続することとした。また、重粒子線治療を施行した症例についてホルモン療法の細分化を図るために新しいリスク分類を作成する必要性があるかを検討するために、Candioloノモグラムで高リスク群について治療成績を評価したところ、Candioloノモグラムによる高リスク群は低、中リスクと比較して生化学的再発が有意に不良であったことから、日本人に相応しい新しいノモグラムを検討することは治療成績だけでなく患者の負担の軽減や治療費の抑制にも繋がる可能性が見いだせた。重粒子線治療のRBEについては、まず低リスク群でPSANadirと再発率を指標に検討した。その結果、生物モデルを用いた解析で寡分割照射になるほどRBEが若干低下する可能性があることが判明し、今後の超過分割照射の臨床試験のプロトコール立案に応用する。高線量率組織内照射に関しては、単独療法において、患者の苦痛や病棟スタッフの負担がなく血尿もない方法として、2回の全身麻酔下に2回刺入を行い、TRUSおよびRALS同室CTを用いて膀胱直下で針を止め、麻酔下で刺入~計画~照射~抜去まで行う方法を確立した。超過分割照射(SBRT)に関しては、短期成績を報告するとともに従来との治療成績を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定した内容については概ね順調であり5編を論文投稿できた。 今年度は、まず同じ線質の中で線量分割や照射技術による治療成績の影響について調査し、陽子線治療、重粒子線治療の研究結果を英文誌に投稿し、1編は掲載された。また、寡分割照射のプロトコールを検討するために、X線での短期成績と重粒子線治療での超寡分割照射におけるRBE変化を求めた。今後は、定位照射に関する臨床試験の骨子も固まったので、今後はプロトコールの作成を急ぐ。次年度からは線質の違いによる差により注目した検討を公開データベースをもとにした研究として施行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者が共同利用として高線量率組織内照射、X線外部照射のデータを研究利用のために公開したため、経過観察中の前向きIMRT登録データ解析に先行して2015年までの治療成績を重粒子線治療、陽子線治療と比較することが可能であり、これを行うための倫理審査手続きを進めている。また、高リスク前立腺癌で重粒子線治療を施行した600例のデータから現在ノモグラムを作成しており、これが完成すれば他の治療でも合致するかについて検討できるため、ノモグラム作成を迅速に行う。また、作成されたノモグラムが他の照射技術でも有用であり普遍的なものであるのかを検討する。 定位照射の臨床試験については、現在プロトコール作成中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた人件費は研究費確保のために共同研究者の複数の部下が研究活動に参加してデータ登録とクリーニングを行ったことで契約する必要がなかった。また、COVID-19の世界的な感染拡大により、昨年度参加予定の学会参加の主な方法がWeb参加となり、本研究チームの検討に関しても面前での会議を避けWebで行ったために計上していた旅費の多くが不要となった。以上の2つが次年度使用額が生じた理由である。現在、研究成果が当初予想を上回る可能性が高く、来年度には論文校正費および論文掲載費用を増やす必要が生じているために一部をこれらに使用し、残りは人件費に上乗せしてデータベース構築を完成させる計画である。
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