研究課題
進行肝細胞癌患者において免疫療法の適応となる症例が近年増加しており、その治療効果予測に有用な画像バイオマーカーの可能性が注目されている。今回、免疫チェックポイントprogrammed cell death ligand 1 (PD-L1)陽性肝細胞癌における造影CTならびにGd-EOB-DTPA造影MRI所見、さらに分子病理学的所見の特徴を明らかにするために検討を行った。外科的切除された肝細胞癌353結節を対象とし、PD-L1の免疫染色を行い陽性群 (n=82)と陰性群 (n=271)とに分類した。画像解析としてLIRADSの主要所見および副所見を中心とした定性評価を行い、また拡散強調像におけるapparent diffusion coefficient (ADC)、肝細胞相での増強率を測定した。その結果、PD-L1陽性肝細胞癌は造影CT動脈相でrim様造影効果または造影低下域を呈する頻度が高く、またADC低値を示すことが明らかとなった。PD-L1陽性肝細胞癌を有する患者では、術前の血清腫瘍マーカーが高値であった。病理学的にはPD-L1陽性肝細胞癌は低分化型の頻度が高く、免疫染色におけるPD-L1発現とP53発現との間に正の相関が認められた。以上の結果より、PD-L1陽性肝細胞癌はTP53変異と関連し、生物学的悪性度が高い一群であることが考えられた。さらに造影CT動脈相におけるrim様造影効果または造影低下域、ADC低値が肝細胞癌におけるPD-L1発現、すなわち免疫療法の治療効果予測に応用できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
症例集積や画像解析、免疫染色などの実験は予定通りに進行している。
今回の検討で明らかになった画像所見の特徴が、実際の肝細胞癌に対する薬物治療の効果や予後を予測できる可能性について評価する。
学会がweb開催となり旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度では旅費や物品費として使用する予定である。
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Radiology
巻: 306 ページ: e220531
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画像診断
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消化器・肝臓内科
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