研究課題/領域番号 |
21K07737
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
小嶋 光明 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (80382448)
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研究分担者 |
伊藤 敦 東海大学, 工学部, 教授 (80193473) [辞退]
吉田 茂生 東海大学, 工学部, 教授 (70174927)
大原 麻希 (小原麻希) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 研究員 (80736992)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | MRT / X線マイクロビーム / DNA二重鎖切断 / レスキュー効果 / バイスタンダー効果 |
研究実績の概要 |
本研究ではマイクロビーム放射線療法(MRT)の抗がん効果の仕組みとして「がん組織ではX線が照射された細胞(照射細胞)から周囲の非照射細胞にバイスタンダー因子が伝達され死滅する(バイスタンダー効果説)。正常組織では照射細胞に周囲の非照射細胞からレスキュー因子が伝達され形態が守られる(レスキュー効果説)」という仮説を立て、細胞レベルで検証することを目的とした。 2021年度はヒト正常胎児肺由来繊維芽細胞(WI38)とヒト肺胞基底上皮腺がん細胞(A549)のそれぞれの細胞集団に、1GyのX線を照射野面積を変えて照射し、照射細胞1個当たりのDNA二重鎖切断(DSB)数を比較した。その結果、WI38では照射野面積が小さいとDSB数が顕著に減少していたが、 A549では同様の傾向は見られなかった。これらの結果から、正常細胞集団では照射野面積が小さくなると(照射細胞が非照射細胞に完全に囲まれている状態)とレスキュー効果が生じる可能性を見出した。 2022年度はレスキュー効果のメカニズムを明らかにするために、WI38に維持されている細胞間情報伝達機構(ギャップ結合)をリンデンで阻害し、照射野面積とDSB数の関係を検討した。その結果、リンデンの有無に関わらず、DSB数は照射野面積に依存していた。よって、レスキュー効果にはギャップ結合を介した細胞間情報伝達機構のみが関与しているわけではないことがわかった。 2023年度はWI38とA549に1GyのX線を「すだれ状」に照射し、DNA二重鎖切断(DSB)数を調べた。その結果、WI38では細胞集団全体に均一に照射した場合と比較して、「すだれ状」照射では照射野内の細胞のDSB数が有意に減少することがわかった。しかし、A549では同様の結果は見られなかった。よって、MRTは正常細胞集団にレスキュー効果を誘導することで正常組織を保護する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常細胞とがん細胞を共存培養する手法の確立に時間を要した。そのため、in vitroで模擬がん状態を再現し、「すだれ」状照射をする実験の開始に遅れが生じた。また、コロナ禍の影響により、計画通りに備品(ライブセルイメージング 装置)の購入ができなかったため、細胞の挙動を解析する実験の開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroで模擬がん状態を再現し、「すだれ」状照射の効果を検証する。また、乳腺上皮細胞と乳がん細胞を用いた実験も行い、放射線治療の代表症例である乳がんでもMRTが有効か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で備品(ライブセルイメージング装置)の生産に遅延が生じ、購入を次年度に見送った。その結果、残額が生じたため次年度に繰り越すこととした。
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