研究実績の概要 |
癌は最も悲惨な病気の一つである。癌の第一選択治療は、外科手術、化学療法、放射線療法などの複数の治療法からなるが、近年、光増感剤を投与した後特定の光で照射する光線治療が、新たな革新的ながん治療法として注目されている。光増感剤が光を浴びると一重項酸素が発生し近くの細胞を死滅させる。しかし、光線治療には、光増感剤を励起するための外部光源が必要であり、全身治療には適していないという制限がある。本研究の目的は、治療用放射性核種から放出されるチェレンコフ放射(CR)が光線治療用光増感剤を励起する内部光源となり、外部光源を使用せずに相乗的ながん治療効果が期待できることを検討することである。 2021年度は、IVIS 光イメージングシステム, VISQUE 光イメージングシステム, Complementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS) camera などを用いて放射性同位元素である64Cu、90Yから放出されるCRを確認した。そして、CRで励起される最適な候補の光増感剤を検討した。スペクトロフルオロメーターによる候補光増感剤の吸光度と蛍光スペクトルの測定、光イメージングシステムによる当光増感剤の蛍光発光可視化などもできた。さらに、IVIS光イメージングシステムと適切な自作フィルターを組み合わせることにより,CRによって誘起された光増感剤からの蛍光発光スペクトルを測定することができた。 また、腫瘍への特異的結合し、かつ外部光源から出る適切な波長の光で励起される新候補光増感剤を探すことも並行して検討している。
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