研究課題
ウイルスによる気道感染症の多くは自然経過で治癒するが、まれに重症化し呼吸不全に至る。本研究では、重症ウイルス性肺炎の病態を「ウイルス感染と肺の微生物叢」および「ウイルスに対する過剰な免疫応答」の2点に着目して解析を進めている。近年の次世代シーケンス(NGS)による解析の結果、従来無菌と考えられていた肺などの下気道にも微生物叢が形成されていることが明らかになったが、呼吸器疾患の重症化との関係については未解明な部分が多い。2023年度は、前年度に続き、ロングリードシーケンスであるナノポアシーケンスの有用性の検証を主に行った。5症例の気管支肺胞洗浄液を解析したところ、NGSの主流であるショートリードシーケンスと比較して、ナノポアシーケンスでも同程度の検出感度でウイルスや細菌を検出できることが確認された。さらに、気管支肺胞洗浄液の細胞成分を用いたRNAシーケンスを行うことで、ウイルス性肺炎が重症化する機序を解析する系の構築を進めた。一方で、感染症の重症化には、宿主の過剰な免疫応答が重要な役割を果たしている。重症感染症患者から採取された末梢血単核球を用いてシングルセルシーケンスを行い、各免疫細胞分画の遺伝子発現を解析する系の構築に取り組んでいる。小児のEBウイルス感染症患者の末梢血単核球からシングルセル遺伝子解析用のライブラリーを作成し、NGSにより約5000細胞の判読を行った。各細胞分画に特異的な遺伝子を基に分類し、それぞれにおける遺伝子発現パターンを比較した。また、EBV感染症の典型例である伝染性単核症と、重症病態である血球貪食性リンパ組織球症とを比較した結果、それぞれの疾患において特徴的な細胞群を同定した。さらに、EBウイルス感染症患者の末梢血では、一部の細胞集団で、ウイルスの制御に重要と考えらえる遺伝子が高発現していることが示された。
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