研究課題
神経芽腫は、神経堤細胞が交感神経系へ分化する過程で発生する代表的な小児難治性固形がんで、小児がん死亡の約1/6を占めている。特に、高リスク神経芽腫患者の大部分は、一旦は治療に反応して寛解を達成するが、その半数以上が再発して極めて治療困難になり、その長期生存率は未だ50%に達していない。これには、治療後に微小残存病変(MRD)として体内に残存したがん細胞が再活性化し、異なる形質を示すようになることが重要だと考えられる。化学療法や放射線療法は、治療後に亜致死となったがん細胞および微小環境中の間質細胞に細胞老化を誘導(治療誘発細胞老化:TIS)し、エクソソームやサイトカイン等の分泌(細胞老化随伴分泌現象:SASP)を促していることが明らかになり、治療困難のメカニズムを理解するためには、がん細胞の異なる形質の発現を担う分泌因子の同定が必須だと考えられる。これまでに申請者らは、MRDの新規評価法を開発してその動態を明らかにすると共に、神経芽腫細胞と微小環境の主要な構成細胞で分泌活性の高い間葉系幹細胞(MSC)との相互作用を明らかにしてきた。そこで本研究では、MSCのSASPによって分泌される分子を同定し、その機能を明らかにすることを試みる。本年度の研究では、高リスク神経芽腫治療に用いられるシスプラチン(CDDP)やテモゾロミド(TMZ)によるMSCのSASPによって分泌される分子群を同定した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、神経芽腫細胞の異なる形質の発現を担う分泌因子を同定することを目指している。これまでに、高リスク神経芽腫治療に用いられる化学療法剤によるMSCのSASPによって分泌される分子群を同定し、おおむね期待通りに進行している。
高リスク神経芽腫治療に用いられる化学療法剤によるMSCのSASPによって分泌される分子群を候補として、それらの神経芽腫細胞に対する作用とその分子機構の解析を行なっていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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