小児とくに乳幼児の認知機能発達ならびにそれを阻害する病態要因に関わる一連の脳波分析研究を行っている。申請者らは既に認知機能障害を来す発達性てんかん性脳症において、頭皮脳波上の高周波・速波振動 (HFO/FO)が顕著に出現し、病態に深く関わっていることを示した。HFO/FOは通常の脳波周波数帯域より遥かに高い周波数の明瞭な振動である。頭蓋内電極記録ではてんかん原性との関係を以前より指摘されていたが、申請者らが頭皮脳波でも検出できることを示し、発達性てんかん性脳症の病勢との関係を指摘したものである。 今回の研究計画では発達性てんかん性脳症の多数症例の治療過程でHFO/FOの消長と治療効果(てんかん発作および認知・発達)の関係を詳細に、多変量解析により解明することを目指した。乳幼児の認知・発達の変化と治療経過やHFO/FOとの関係を分析することにしていたが、折悪しくコロナ禍の渦中で受診患児が計11例と激減したことと、思わしい治療効果が上がらなかったことのために、研究期間内に十分な統計解析ができる程のデータは得られなかった。将来に引き続き症例を集積しつつ分析を実現したいと考える。 並行して第二の研究として、非てんかん性のHFO/FOと認知能力や行動発達との関係という側面からもこの問題を追及しており、てんかん発作を示さない自閉スペクトラム症 (ASD)と注意欠如・多動症 (ADHD)の計124例の未投薬小児において、脳波から生理的と思しいHFO/FOを同様の方法で検出して、この出現が知能指数 (IQ)・発達指数およびADHDを欠くことと有意に関係することを示した。まだ第三の研究として、頭皮脳波から検出されるFOの真正性を確認する技術的開発も行った。 小児期HFO/FOに関する多面的研究として一定の成果を上げることができたと考える。
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