研究課題/領域番号 |
21K07755
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山下 竜幸 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30571038)
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研究分担者 |
王 飛霏 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10629033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 臍帯 / 細胞外分泌小胞 / EVs / MSC / 硫酸化糖脂質 / サルファタイド / exosome |
研究実績の概要 |
前年度にTGF-βファミリーのサイトカインであるGDF-15が、臍帯MSCをサルファタイドで刺激培養することでEVsに著しく濃縮されることが判明した。GDF-15の他に、TGF-βファミリーのうちGDF-1,GDF-2, GDF-3, GDF-5, GDF-9, GDF-11がEVsに存在することが報告されているため、サルファタイドがGDF-15同様に他のGDFファミリーに対してもEVsへのソーティング効果を示すのかを検証した。その結果、サルファタイドによるEVsソーティング効果はGDF-15に特異的に発揮されることが判明した。ここまでの内容を2022年11月に開催された日本生化学会総会にて発表した。 EVsにはエンドサイトーシスを経て形成されるexosome、直接エキソサイトーシスにより分泌されるectosomeなどがあるが、exosomeの分泌をバフィロマイシンで特異的に促進した際、GDF-15含有EVsの量も増加したことからGDF-15はexosomeに含まれることが示唆された。また、exosomeの分泌にはESCRT(endosomal sorting complex required for transport)依存経路とESCRT非依存経路が存在するが、ESCRT非依存的経路の特異的阻害剤であるW146を加えてもGDF-15含有EVsの量に変化が見られなかったことからESCRT依存経路により分泌されるexosomeにGDF-15が濃縮されることが示唆された。これらのことからサルファタイドは、GDF-15のexosomeへのESCRT依存的ソーティングに関わることが強く示唆された。 これらの内容を発明名称「細胞外小胞集団の製造方法及び細胞外小胞集団」として2022年4月14日に国内特許出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定ではsal(+)EVsのHIEモデルマウスに対する治療効果が含有するGDF-15によるものなのかを検証するため、臍帯MSCのGDF-15欠損株を作成し、この細胞株をサルファタイドで刺激培養して得られるGDF15欠損型sul(+)EVsがHIEモデルマウスに対し治療効果を示さなくなるかを確認する予定であったが、GDF-15が臍帯MSCの生存にクリティカルに関わるのか未だ得られていない。そのためGDF-15の治療効果への関与を示す決定的な証拠がまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
臍帯MSCのGDF-15欠損株をCRISPAR/Cas9システムを用いて作成し、この欠損株をサルファタイドで刺激培養して得られるEVsを精製する予定であったが、未だ得られていない。この問題を解決するために、細胞が生育するまではGDF-15を発現し、ある薬剤を添加したときのみGDF-15の発現が損なわれる株の作成を試みる予定である。 またサルファタイドが特定のタンパク(GDF-15)のESCRT依存的ソーティングに関わることが示唆されたため、ESCRT関連タンパクを一つ一つ欠損させた株を作成し、サルファタイド刺激によるexosomeへのGDF-15ソーティングがどの分子を欠損させた時に損なわれるかを突き止め、この反応がどのような分子メカニズムによって起こるのかを明らかにする。
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