研究課題
遺伝性の遠位尿細管性アシドーシス(distal renal tubular acidosis :dRTA)は、腎の集合管におけるV-ATPaseの異常により酸分泌障害をきたして代謝性アシドーシスを来すほか、感音性難聴の合併も多い。重炭酸によるアシドーシスの治療は、成長障害や腎石灰化の改善に効果的であるが、感音性難聴は発症時期や機序が未だ解明されておらず、また進行性かつ不可逆性であるため、患児のQuality Of Lifeを下げる主な要因となる。 dRTAの原因遺伝子の一つであるATP6V1B1は、腎の集合管とともに、内耳の内リンパ嚢にも発現しており、pH調整に関与すると考えられる。そのため、V-ATPaseの内耳における酸分泌障害は、感音性難聴の発症に関与すると考えられる。 我々はATP6V1B1の相同遺伝子であるatpv1baを改変したゼブラフィッシュを作製して、内耳での酸塩基平衡における障害と難聴の関連を検討し、dRTAにおける感音性難聴発症のメカニズムを解明することを目的としている。最終年度である2023年度は、作製済みであるatp6v1ba遺伝子欠損ゼブラフィッシュの形態学的解析を実施した。走査電子顕微鏡での解析では、atp6v1ba遺伝子欠損ゼブラフィッシュの内耳の有毛細胞においてマクロオートファジーの所見が認められ、オートファジー機能不全による有毛細胞障害を示唆する所見が得られた。ゼブラフィッシュモデルは、その透明性により内耳が直接可視化可能であり、創薬のin vivoスクリーニングにも十分な実績を持つことから、本疾患モデルは将来の新たな治療法開発にも貢献する可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 699 ページ: 149551~149551
10.1016/j.bbrc.2024.149551