研究課題/領域番号 |
21K07757
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
内田 琢 宮崎大学, 医学部, 助教 (60464137)
|
研究分担者 |
高宮 考悟 宮崎大学, 医学部, 教授 (40283767)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / AMPA型グルタミン酸受容体 / 遺伝子変異 / シナプス / パッチクランプ / 初代神経細胞培養 / レンチウイルスベクター |
研究実績の概要 |
神経発達障害に関与する遺伝子変異が、神経細胞の働きにどのような影響を与えるのか、どう治療に結びつけることが可能であるかを調べるため、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)児童より報告された、AMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)GluA1サブユニットをコードするGRIA1遺伝子の1アミノ酸置換(ミスセンス)変異に注目し、これを解析する。本研究では、変異型GluA1が構成するAMPA受容体の生理学的機能と神経細胞機能への影響を調べ、病態原因の解明、及び治療効果のある薬剤発見を目指す。これまでの報告と同様の変異を持つヒトGluA1発現ベクターを作成し、培養細胞と実験動物を用いて、①AMPA受容体単体のイオンチャネルとしての機能、神経細胞におけるシナプス伝達機能への影響、さらに高次脳機能に関与するシナプス可塑性への影響を調べる。②AMPA受容体アンタゴニストや向精神薬等に対する応答を観察し、治療の可能性を模索する。 本年度はマウス神経培養細胞を作成し、これに野生型、変異型GluA1の発現を発現させそのシナプス機能を評価した。当初計画していたエレクトロポレーション法では、長期間の培養中に発現量が低下してしまったため、ウイルスベクターによる遺伝子発現に切り替えた。一方で去年度までに神経発達障害に関与するGluA1遺伝子ミスセンス変異の新規報告が多数報告されたため、それらについても変異型GluA1発現ベクターの作成をおこなう。 マウス神経細胞を用いた変異型GluA1のシナプス機能解析では、これまで報告されていた機能変化とは異なる結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養神経細胞を用いた解析については遺伝子発現方法をエレクトロポレーション法からレンチウイルスベクター法に変更したためその条件検討にやや時間がかかった。これを用いて変異型GluA1のシナプス機能への影響を調べている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き計画に従い研究を進める。 レンチウイルスベクター法によるGlua1の発現はこれを認められたため、この方策を用いて初代神経細胞を使用したシナプス機能解析を行う。 これま報告されたGluA1遺伝子ミスセンス変異の臨床症状と変異型GluA1が構成するAMPA型グルタミン酸受容体のチャネル機能変化についての考察を深める。特に、最近の報告では、知的障害を中心に、自閉スペクトラム症のみならず注意欠陥多動性障害(ADHD)やてんかんの臨床症状を持つ報告も追加されたため、GluA1遺伝子ミスセンス変異の神経発達障害への影響は研究開始当初想定していたよりもはるかに複雑であることが分かってきた。 最終年度であるため、論文の作成発表を目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究方針の変更により、GRIA1ノックアウトマウスの使用を中止したため、項目「その他」における動物飼育維持費が低減した。電気生理実験に用いるパソコンをはじめ各機器の挙動が不安定であり、それらの修理代替の費用に充てる。
|