最終年度には、難治性AMLの発症と関連するFUS::ERG融合遺伝子の機能解析のため、マウスの造血幹細胞にレトロウイルスベクターを用いて、Fus::Erg融合遺伝子を導入し、恒常的にFus::Ergを発現するマウス造血幹細胞を作成した。作成したFus::Ergを用いて、メチルセルロース培地でのコロニー形成実験を行ったところ、Fus::Erg融合遺伝子がマウス造血幹細胞の自己複製能を誘導する事を明らかとなった。また、全トランスクリプトーム解析の結果、Fus::ErgがMYCの高発現に関連する遺伝子群の発現を制御しており、このことがマウス造血幹細胞の自己複製能の増強に関わる事が明らかとなった。しかしながら、免疫不全マウスに対する移植実験では白血病の発症は確認できず、白血病発症にはFus::Ergのみでは不十分であり、強調する遺伝子異常が必要である事が示唆された。以上の成果をまとめて、現在論文を作成中である。 本研究では、3年間の研究で、Ph-like ALL患者から同定されたSPAG9::JAK2融合遺伝子とETV6::FRK融合遺伝子の機能を解析し、それぞれの融合遺伝子陽性ALLにおける新規の治療標的を同定し、報告した。また、難治性AMLの発症に関わるNUP98::NSD1およびFUS::ERG融合遺伝子の機能解析を行い、その白血病発症に関わるメカニズムの一端を解明し、新規治療の可能性を示すことができた。
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