研究実績の概要 |
横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma: RMS)は、筋原性の高悪性腫瘍で集学的治療により予後は改善した。しかし、治療抵抗群もあり、より効果的な治療法の開発が喫緊の課題である。ミオスタチンは筋肉の増殖を抑制するミオカインで、筋萎縮の治療法としてミオスタチン阻害に関する研究が盛んである。申請者は、ミオスタチン遺伝子(MSTN)のスプライシングを阻害してミオスタチンの産出を抑えるアンチセンス核酸(MSTN-ASO)の開発に成功した(Maeta et al., Int J Mol Sci., 2022)。MSTN-ASOは、想定通り、筋芽細胞の増殖を促進させたことから、筋萎縮に対する治療への応用が期待される。一方、本研究において、前述のMSTN-ASOがRMS細胞の増殖を阻害することを明らかにした。MSTN-ASOは、筋芽細胞と同様にRMS細胞においてもミオスタチンの産出の低下とミオスタチンシグナルの低下を引き起こしたが、筋芽細胞の場合と異なりRMS細胞の増殖は阻害した。この結果は、ミオスタチンの筋芽細胞とRMS細胞の細胞増殖における作用が異なることを示唆している。本年度はMSTN-ASOの投与によりRMS細胞においてアポトーシスが誘導されることを明らかにした。RMS細胞のアポトーシスの誘導が既知であるシスプラチンとMSTN-ASOの併用利用を検討したところ、併用で効果が増加した。また、シスプラチンとMSTN-ASOの作用機序が異なることが示唆された。さらに、ヌードマウスxenograftでMSTN-ASOをRMS細胞と同時に接種させたところ、腫瘍拡大の抑制効果がみられた。一方で、あらかじめ腫瘍を拡大させておいた後にMSTN-ASOを投与して大きさの変化を検討した場合は有意な差は得られなかった。腫瘍縮小効果をもたらす適切な投与量を検討する必要がある。
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