研究課題/領域番号 |
21K07763
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 好勇 久留米大学, 医学部, 准教授 (40309753)
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研究分担者 |
柏木 孝仁 久留米大学, 医学部, 准教授 (70320158)
渡邊 浩 久留米大学, 医学部, 教授 (90295080)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パラミクソウイルス / 抗ウイルス薬 / ペプチド阻害薬 / RSV |
研究実績の概要 |
「PFr」の細胞内移行性の向上を目指し、昨年度は「PFr」のTAPタグ部分を改良し、全体の分子サイズを約30%小さくすることに成功した.本年度はこの新しい「PFr」(以降RSV-PFrと略)を用い、以下の2点を中心に実験を行った. (1)RSウイルス(RSV)および他のパラミクソウイルスに対する阻害効果の検証.まずヒト喉頭癌由来HEp-2細胞にRSVを接種し、その直後に RSV-PFrをトランスフェクションし48時間培養した.培養液中のウイルス力価を測定することでウイルス増殖に与える影響を調べた.その結果、RSV-PFrはRSVに対しIC50値が5.0 nMと著しい増殖阻害効果を示した.また、RSV-PFrは標的のPタンパク質に結合することも確認でき、この新しい「PFr」の設計手法は有効であると判断した.一方、RSV-PFrが他のウイルスにも有効かどうかパラインフルエンザウイルス(PIV)を使って試したが阻害効果は得られなかった.パラミクソウイルスのPタンパク質は立体構造がウイルス種間で高度に保存されているため、当初ウイルスの種を超えて阻害効果が得られると考えていたが予想に反する結果となった. (2)各種PFrの作製.他のパラミクソウイルス種に対応するため、PIV、麻疹ウイルス(MeV)、ムンプスウイルス(MuV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)のそれぞれのPタンパク質を基に4種類のPFrを作製した.まず各PFrがそれぞれのウイルスのPタンパク質に結合することを確認した.そして、各PFrの抗ウイルス効果を検証したところ、PIV-PFrではPIVに対しIC50値が約30 nMと強い阻害効果が得られ、またMeV-PFrでもMeVに対しIC50値が約80 nMと強い阻害効果が得られた.現在、MuV-PFrとHMPV-PFrについても実験を行っている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はRSVのPFrにより他のパラミクソウイルスも抑制できると予想していた.標的とするPタンパク質の立体構造が非常に似ているのが理由であったが、予想に反したため各ウイルス種に対応したPFrを作製する計画へ変更した.また当研究室では今回初めて扱うパラミクソウイルスがほとんどで、まず実験材料となるウイルスを増やすのに時間がかかり、さらにプラークアッセイによる定量法を確立するまで時間を要した.ウイルスにより扱う培養細胞が異なり、プラークアッセイの条件もそれぞれ異なるためプラークアッセイの至適条件を探すのに手間を要した.特にパラミクソウイルスはプラークが出るまでに1週間程度要するため実験の進行に影響を与えた.
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今後の研究の推進方策 |
現在解析中のMuV-PFrとHMPV-PFrの実験を継続しデータを蓄積する.また各PFrの細胞に対する毒性を調べ、抗ウイルス効果が細胞毒性によるものでないことを検証する.一旦ここまでの内容を「培養細胞レベル」での抗ウイルス活性の内容として総括し投稿論文を作成する.また学会にて成果報告する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナウイルスまたはウイクライナ戦争の影響で消耗品等の入荷が大幅に遅れることがあり実験の進行に影響が出た.また実験計画の変更もあり未使用額が生じた. 使用計画:今年度の実験関連経費に充てる計画である。
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