研究課題/領域番号 |
21K07765
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
加藤 愛章 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (90635608)
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研究分担者 |
吉松 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (20221674)
大野 聖子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (20610025)
坂口 平馬 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (70574630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | QT延長症候群 / 胎児診断 / 心磁図 / 胎児心エコー |
研究実績の概要 |
2022年度は、QT延長症候群(LQTS)の早期新生児期の心電学的特徴を明らかにするための研究を行った。 対象は2018年4月~2023年3月の期間に当センターで母体LQTSから出生した新生児23例。母体LQT1は8例、LQT2は5例、LQT3は1例、遺伝子型不明は9例であった。日齢0から日齢6まで連日12誘導心電図を記録した。安定したRR間隔の部位の波形を抽出し、接線法を用いたマニュアル計測でT波の終末を同定した。新生児の遺伝子型、心拍数、QT間隔、それらの経時的変化を検討した。対象のうち10例で後に遺伝子検査を施行し、7例で母体と同一の変異が同定され(LQT1は5例、LQT2は1例、LQT3は1例)、3例が正常新生児と診断された。13例は現時点では遺伝子検査を施行していない。房室ブロックを呈した症例はなく、全例で洞調律だった。生後、日齢3にかけて心拍数は低下し、それ以降に増加傾向を示した。QTcは21例/23例(91.3%)で日齢0または日齢1で最大値をとり、QTcが480ms以上となったのは、Bazett補正で10例、Fridericia補正で4例であった。以後はQT間隔は短縮傾向があり、いずれの症例も日齢6の時点では480ms未満となった。 今回の検討では正常新生児と診断されたのは3例のみで、遺伝子変異が特定された群との比較では明らかな有意差はなかった。正常新生児の心電図変化を検討した北欧からの文献的データ(Europace. 2021:23:278)と比較すると、我々の症例での心拍数、QT間隔の日齢による変化は、正常新生児と同様の傾向を呈していた。心拍数は、正常新生児とほぼ同様の値であったが、QT間隔は我々の群で明らかに大きい傾向があった。生理的に日齢0、1はQT間隔は長くなる傾向があり、その時点でLQTSの症例もQT延長が顕在化しやすいが、その後にQT延長は目立たなくなる。多数の正常例との比較検討が必要だが、病的なLQTSの検出には、日齢0~1日の心電図によるスクリーニングが有効である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予備的な検討として、QT延長症候群が疑われる胎児に対して行われた心エコー検査の内容を見直したが、算出される各パラメータが使用するエコー機種によって異なり、また想定していた以上に検者間の格差が大きいため、検査方法を再検討する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
植込み型除細動器を植込みされている母体については心磁図検査を施行できず、胎児の電気的活動と、胎児心エコーで捉えられる機械的な活動の関連が検討できていない。重症な経過が想定される胎児の母体ほど、植込み型除細動器が導入されていることが多い。現在、胎児心磁図以外にも、胎児心電図の機器も臨床利用ができるようになっている。胎児心電図も併用しながら、胎児のQT間隔を測定できれば、より多くの症例で検討できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染流行の影響で海外での学会参加の機会がなく、想定ほど旅費を使用する機会がなかった。研究成果の発表のため、海外学会への参加を予定している。
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