研究課題/領域番号 |
21K07769
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
安冨 素子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (80554526)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 食物アレルギー / 濾胞性ヘルパーT細胞 / トリプトファン代謝 |
研究実績の概要 |
【背景】乳幼児期発症の食物アレルギーは耐性獲得しやすいが、治癒しないまま症状が持続する患者も存在する。食物アレルギーが持続する患者において、皮膚炎の持続や抗原特異的IgE高値がリスクとなる事、トリプトファン代謝が低下していることが示されているが、これらの現象が、どのように病態に関与しているのかは不明である。我々は、食物アレルギーマウスモデルにおいて、皮膚炎の持続がアレルギー症状を増悪させることを報告しており、同実験系において、難治化のメカニズム解明と治療介入方法を探るため、以下の実験を行った。 【方法】マウス両耳にビタミンD誘導体(MC903)と卵白アルブミン(OVA)を塗布し、経皮感作後にOVAを経口投与すると低体温や下痢などのアレルギー症状をきたす。このモデルにおいて初回OVA経口投与後も、MC903を塗布した皮膚炎持続群と、溶媒のみを塗布したコントロール(C)群を作成し、2回目OVA投与後のアレルギー症状、抗原特異的免疫応答、腸管内mRNA発現、血清中トリプトファン代謝産物のELISA測定によりトリプトファン代謝を評価した。 【結果】 ①皮膚炎持続群では、2回目OVA投与後のアレルギー症状や腸管における肥満細胞活性化が悪化し、低体温と皮膚炎の程度は正相関していた。②血清中トリプトファン代謝産物と、皮膚炎、1回目と2回目の体温変化、低体温など症状増悪との関連が示唆された。③一方で血清OVA特異的IgE、腸管内OVA特異的IgAなど抗原特異的免疫応答は、皮膚炎処置による有意差は認めなかった。④皮膚炎持続群の皮膚遺伝子発現解析では、トリプトファン代謝酵素の発現に差が見られた。 【まとめ】皮膚炎の持続は、アレルギー症状の増悪をきたし、トリプトファン代謝変化との関連が示唆されるが、抗原特異的免疫応答に関しては、さらに検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染拡大のため実験従事者の勤務制限があり、実験の遂行に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
皮膚炎持続によるアレルギー症状の悪化は再現性をもって確認できているが、腸管における抗原特異的免疫応答の増強を必ずしも伴わない可能性が示唆される。経皮感作における難治化の解析には所属リンパ節の解析が必要と考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験が遅れたため、次年度に当該年度で予定していた、動物実験を行う。当初腸間膜リンパ節で予定していた実験を所属リンパ節での実験に置き換える予定である。マウスサンプルの代謝産物解析には、1検体で30万円、血液・皮膚をコントロール群、皮膚炎持続群で解析し、120万円ほどの使用を見込んでいる。
|