研究実績の概要 |
本研究の目的は最近発見された遺伝性自己炎症性疾患の責任遺伝子のうち以下の3つのカテゴリーの疾患群について、病的意義不明バリアント(VUS)の評価実験系を構築することである。①自己炎症性角化症の解析: IL36RN遺伝子変異の評価系構築及びIL-36Ra-IL-36受容体複合体構造解析。培養細胞レベルの機能実験系は確立済みである。構造解析に向けたタンパク試料の調整を行なった。機能的にはIL-36αによる活性をIL-36Raタンパクが阻害できることは確認できているが、高純度精製したIL-36受容体タンパクとIL-36α、IL-36Raそれぞれの分子間相互作用が確認できない状況が続いており、今後改善策の検討が必要である。②若年発症ベーチェット病の解析: TNFAIP3遺伝子変異の評価系構築。全国調査やPIDJ委員会等で新規に見出された遺伝子バリアントについて、それぞれin vitro実験による病的意義の判定を行なった。③新規I型インターフェロン症の解析: PSMB9異常症、SAMD9L関連自己炎症性疾患、IKBKG関連自己炎症性疾患のそれぞれの症例で同定された遺伝子変異の評価系構築。IKBKGについて新規に検出されたバリアントの評価を1件行なった。PSMB9については培養細胞レベルの遺伝子発現実験で、変異導入分子では前駆体から成熟型に変換できず、患者由来細胞と同様の形質が再現された。SAMD9Lについては培養細胞レベルの機能実験系として、293-F細胞を使用した一過性発現実験においても、患者由来細胞と同様に変異体では野生型と比較して有意な細胞増殖の抑制が再現された。本研究により、IL36RN, TNFAIP3, IKBKG, PSMB9, SAMD9Lそれぞれの遺伝子のバリアントの病的意義の判定を行う、in vitro実験系が構築できた。
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