研究課題
乳児期に発症する重度の薬剤抵抗性てんかんと、その後進行する認知行動障害を呈するてんかんの一つ、ドラべ症候群の大脳ネットワークの病態メカニズムを理解するため、責任遺伝子であるScn1aをノックアウトしたラットの脳機能を、種々のMRI撮像技術を用いて解析する研究である。令和3年度は当初の計画のうち、特に病態解明に重要と考えられた安静時機能的MRI(fMRI)を立ち上げ、解析することに成功した。具体的には撮像時にラット頭部固定具の設計・作成と装着方法の確立、麻酔下ではなく覚醒安静時に高解像度で撮像するために必要なラット訓練方法の確立(馴化、ストレス評価など)、実際に撮像したデータから脳の各領域(関心領域)間の機能的な結合の強さを統計学的手法を含めた解析方法の確立、を行い、実際に成体ラット脳の解析から、疾患ラットのある領域で病態に関連すると考えられる強い機能的結合変化が生じていることを同定した。さらに、本疾患では体温上昇でけいれん発作が誘発されることが特徴であるが、疾患ラットでは、ヒトの乳児期に相当する週齢に体温上昇誘発発作を生じさせることによって、fMRI結果や、その後の発作や認知機能悪化がもたらされることが明らかになってきた。令和3年度は他に本症の病態を悪化させるナトリウムチャネル阻害剤投与下でのMRI解析を計画していたが、撮像機器の故障の問題があり、実施困難となった。ただ、前述の通りfMRI実験により重要な知見が得られてきたため、今後、その関連を確認し、関連した大脳ネットワークを明らかにするための実験を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
前述の通り、安静覚醒時のfMRIの撮像法を確立し、実際に病態に関連する可能性のある知見が得られてきていること、さらに、これまでの臨床研究では明らかではなかったが、熱誘発発作がてんかん病態に長期的な影響を及ぼしうるという新たな知見が得られてきたため、そちらに注力していく意義が大きいと考えている。
fMRIで同定できた、ドラベ症候群の疾患病態と関連している可能性のある大脳領域や、初期の熱負荷発作の長期的な病態悪化への影響について、種々の方法を用いてその関連や意義を確認していく。具体的にはウイルスを使用した機能調節による変化や、種々の行動解析、長時間脳波解析などを進めていく予定である。
ほぼ計画通り使用しているが、誤差範囲の支出の違いの範囲と考える。
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