研究課題
本研究は、乳児期に発症する重篤なてんかんの一つ、ドラベ症候群(DS)の病態研究の一環で、責任遺伝子であるScn1aをノックアウトしたラットの脳活動を、種々のMRI撮像技術を用いて明らかにすることを目的としている。まず、マンガン造影MRIを用いた研究で脳の基礎活動の経年齢的変化に関する解析を行い、ヘテロ型ラットの脳活動が3週齢(ヒトの乳児期、DS発症時期に相当)で広範な脳領域で有意に高まっていることをつきとめた。さらに、この高まりの背景に抑制性シナプス伝達の未熟性が関与していることを明らかにし論文化することができた。興味深いことに、この脳活動の高まりは一旦4週齢で消失するが、5週齢で局所的に複数領域に再度活動上昇が観察された。年齢依存的に変化する脳活動の特性と背景の分子ネットワーク病態との関連の一端を明らかにした。5週齢での変化は、今後成体ラットでの表現型特性を明らかにし、その関連を検討していく予定であるが、その中で、このScn1aノックアウトラットの表現型が、同遺伝子をノックアウトしたマウスと比較して軽症であることがわかってきた。マウスでは3週齢から自発発作を認めるものの、このラットでは4週齢以降に散発的に自発発作を認めるのみであったことから、3週齢でのてんかん発作が、その後の表現型の重症度と、その背景にある大脳ネットワークの形成に大きく影響する可能性を考えた。そこで、この時期の温熱誘発発作による成長後の認知・行動機能を解析した。その成果は現在投稿準備中である。さらに機能的MRIを用い、成長後の症状と疾患に関連する大脳ネットワークについて解析し、重要と考えられる特定の候補大脳領域を確認した。
3: やや遅れている
進展状況から当初の計画とはやや異なる実験も行なっているため。
発達期の温熱誘発発作によるラットの表現型の変化に関する解析を進め、論文化する予定である。また、この結果を含め、機能的MRIの解析を進め、発作が大脳のどのようなネットワークの発達に影響するかを明らかにする予定である。
予定していた論文投稿費用が他の資金から利用できたことと、飼育費用が予定していたものより少なかったため。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
Front Neurol
巻: 14 ページ: 1125089
10.3389/fneur.2023.1125089.