研究課題/領域番号 |
21K07781
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
三宅 紀子 日本医科大学, 医学部, テクニカルスタッフ (00421206)
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研究分担者 |
酒井 真志人 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (40643490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 異染性白質ジストロフィー / ライソゾーム病 / マイクログリア / ゲノミクス / 遺伝子細胞治療 |
研究実績の概要 |
異染性白質ジストロフィー(Metachromatic leukodystrophy: MLD)は、アリルスルファターゼAの欠損によって発症するライソゾーム病であり、神経線維の脱髄の進行によって、中枢・末梢神経障害が引き起こされる。MLDの病態形成と遺伝子細胞治療のメカニズムは十分に明らかとなっておらず、その解明はMLDの新規治療標的を提供し得る重要な課題である。
本研究ではMLDの病態と治療におけるマイクログリアと単球由来マクロファージの役割の解明をめざす。本年度は、マイクログリアの系統追跡実験のためにASA-/-マウス、Cx3cr1-creERマウス、Rosa26-LSL-EYFPマウスを用いて、ASA-/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-YFP+/-マウスの取得を目的とした交配を開始し、ASA+/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-EYFP+/-マウスを作出した。 マイクログリアの生存には、CSF1Rシグナルが必要であり、マウスに脳血液関門を通過するCSF1R阻害剤(PLX5622)を食餌に混ぜて投与することで、マイクログリアを長期に渡り除去することができる。MLDの病態形成におけるマイクログリアの役割を解明するために、本年度は、MLDを発症するASA-/-マウスを用いてマイクログリア除去に必要なPLX5622の用量を決定するための基礎検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) マイクログリアの系統追跡実験のために、ASA-/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-YFP+/-マウスの取得を目的とした交配を開始し、ASA+/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-EYFP+/-マウスを作出した。 (2) MLDを発症するASA-/-マウスを用いて、マイクログリア除去に必要なPLX5622の用量を決定するための基礎検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
① MLDにおけるマイクログリアの遺伝子発現とエンハンサー制御の解明 (1) マイクログリアの系統追跡実験を実施するために、ASA-/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-EYFP+/-マウスを作出する。マイクログリアはCx3cr1を高発現するため、ASA+/+; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-EYFP+/-マウス、ASA-/-; Cx3cr1-creER+/-; Rosa26-LSL-EYFP+/-マウスにタモキシフェン投与を行うことで、コントロールマウス、MLDマウスにおけるマイクログリアをEYFPで標識することができる。(2) コントロールマウス、MLDマウスのEYFP陽性マイクログリアと陰性マクロファージをFACSにより分取し、変動遺伝子の同定を行う。(3) また、それらの細胞のオープンクロマチンの部位を同定するためにATAC-seqを、エンハンサー活性の指標としてH3K27acのChIP-seqをおこない、MLDで活性が変化するエンハンサー内の転写因子結合配列から、これらのマクロファージでMLD依存性の転写変化に関与する転写因子を同定する。
② MLDの病態形成におけるマイクログリアの役割の解明 マイクログリアの生存には、CSF1Rシグナルが必要であり、マウスに脳血液関門を通過するCSF1R阻害剤であるPLX5622を食餌に混ぜて投与することで、マイクログリアを長期に渡り除去することができる。そこで、MLDマウスで発症前にマイクログリアを除去し、その効果を脳組織のRNA-seq、脳内スルファチド量、神経症状の比較によって評価する。本研究項目によってMLDの病態形成におけるマイクログリアの役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に導入するはずの機器が導入されず、次年度に繰り越すことになった。
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