研究課題
遺伝性甲状腺疾患であるMCT8異常症は重度の発達遅滞を来す。早期診断法や治療法は確立していない。本研究の目的は、rT3測定による早期診断法の確立と、欧州で治療効果が報告された新薬(Triac)の国内での実用化を目指すとともに海外のグループと国際研究や患者会・レジストリの構築を行うことである。・早期診断法の開発;症例の相談を受けた香港のグループと大規模解析を計画中。2022年10月に主任研究者の出版した論文(Iwayama, et al. Thyroid. 2021)を見た香港のグループ(主任研究者 Rachel Yiu)からMCT8異常症の新規患者のrT3を測定してくれないかと依頼があった。新生児期(日齢1)、1歳時の患者濾紙血と香港の新生児スクリーニングで使用されている正常新生児の濾紙血(n=32)を収集した。LC-MS/MSでrT3を測定し、日齢1でのMCT8異常症のrT3値について検討した。過去の報告では、日本の濾紙を用いて、日齢4-5で採血しており、他国の濾紙で日齢1で採血した検体を用いてrT3値を測定するのは初めてである。・新薬の国内での実用化:製薬メーカー2社と協議を行ったが不調に終わった。・モデルマウスの輸送:ドイツからエクソン欠失モデルマウスの輸送を計画・実施。研究分担者が行っている動物実験で、Crispr/Cas9で作成したモデルマウスのMCT8蛋白の欠失が確認できないという問題で研究が停滞していた。この問題を解決するためにドイツのグループと提携し、エクソンを欠失したモデルマウスの検体を送付してもらうことを計画・実施した。・患者会・レジストリ:患者会の設立とレジストリの構築に向けて順調に進行中。
2: おおむね順調に進展している
早期診断法の開発、モデルマウスの輸送、患者会・レジストリについては順調に進展している。新薬の国内での実用化については、製薬メーカー2社と臨床試験につき協議したが不調に終わり実用化のめどはたっていない。
新薬の実用化に向けて、患者会の設立やレジストリ構築など臨床試験に必要な体制を整備していく。また、Crispr/Cas9で作成しフレームシフト変異が入っているにもかかわらず標的蛋白が欠失しないという現象は過去にも報告されており(Makino, et al. Scientific Reports. 2016)、同様の現象が起こっているとすれば新規の遺伝子制御機構の解明に繋がる大きな発見である可能性が存在する。ドイツのグループと提携し、エクソンを欠失したモデルマウスの検体を送付してもらうことが計画した。ドイツのマウスと比較することで、研究分担者のモデルマウスが、1) MCT8蛋白が欠失しているか、2) ウェスタンブロットでMCT8蛋白の検出に機能する抗体はどれかの2点が明らかとなることが予想される。
ドイツからエクソン欠失モデルマウスを輸送するのに必要な費用を計上していたが、実際の輸送が2023年に延期されたため。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
Brain and Development
巻: 45 ページ: 110~116
10.1016/j.braindev.2022.10.006
Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: 996134
10.3389/fimmu.2022.996134
Frontiers in Pediatrics
巻: 10 ページ: 977476
10.3389/fped.2022.977476