研究実績の概要 |
ファブリー病の頭痛、物忘れ、鬱などの精神神経症状は主に脳血管障害が主流と考えられているが、神経細胞へのGb3等の糖脂質の蓄積は否定できない。そこで昨年度、健常人およびファブリー病患者由来iPS細胞を神経細胞へと分化させ、ファブリー病の原因蓄積物であるGb3が神経細胞に蓄積しない事を生化学的、電顕を用いた形態研究から明らかにし、精神神経症状は血管障害によることを示し、論文にまとめ成果報告した (Miyajima T, Eto Y, et al., J Inherit Metab Dis, 2022)。現在、全国からファブリー病患者の診断の依頼を受け、ファブリー病と診断した患者の臨床症状、血清Lyso-Gb3、遺伝子解析等をまとめ診断した、全国の170名のファブリー病患者の神経障害の遺伝子変異別解析などを進めている(Miyajima T, Eto Y, et al., Manuscript in preparation, 2023)。さらに、ファブリー病神経障害の病因として血管障害のファブリー病患者の機序を明らかにするために、本研究の目的の一つである血管内皮細胞の病態解析に向けて、重症型並びに軽症型ファブリー病患者由来iPS細胞より血管内皮細胞への分化に着手し、神経血管障害との相関を検討している。また、ファブリー病患者由来皮膚線維芽細胞に対して、DDI機構の化合物スクリーニングバンクの薬剤を用いて、α―ガラクトシダーゼに対するシャペロン効果があるか否か、酵素活性測定を評価系を確立し、ファブリー病経口治療薬のスクリーニングの計画、研究を進めている。
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