【研究課題】髄液cell-based assay陽性抗NMDA受容体脳炎の予後:治療合併症の影響 【目的】抗NMDA受容体脳炎はADEMに次いで多い自己免疫性脳炎であるが、治療についてのエビデンスは不十分である。今回、日本人症例の治療合併症と予後の関連、治療合併症の誘因について検討し、予後改善につなげたい。 【方法】Dalmauらの診断基準に基づき、cell-based assay(CBA)による髄液NMDA受容体抗体陽性の抗NMDA受容体脳炎(確定症例)を選び、臨床病期は急性期、回復期、寛解期に分類し、予後因子としてはmodified Rankin Scale(mRS)、ADL、てんかん発作、精神症状、知的障害、記憶障害、運動障害を評価した。急性期~回復期の治療合併症を検討し、合併症が予後に及ぼす影響、合併症の誘因となる検査所見、治療(人工呼吸器、持続鎮静、免疫修飾治療など)を検討した。 【結果】当院のNMDA受容体抗体 (CBA)陽性646検体から、Dalmauの診断基準に従い髄液CBA陽性の抗NMDAR脳炎確定症例176例(奇形腫合併75例)を抽出した。重症治療合併症は洞停止、ショックなどの心肺循環系合併症を12例(8.3%)に、敗血症などの重症感染症を12例(8.3%)に、重症薬疹を2例(1.4%)に認めた。心肺循環系合併症症例ではmRS、精神症状、運動機能が有意に悪く、奇形腫合併例、人工呼吸器治療例、チオペンタールやプロポフォールによる持続鎮静例、血漿交換治療例で有意に高頻度であった。重症感染症合併症例ではmRS、運動機能が有意に悪く、人工呼吸器治療例、プロポフォールによる持続鎮静例、血漿交換治療例で有意に高頻度であった。 【結論】抗NMDA受容体脳炎では重症治療合併症が予後に大きく影響し、人工呼吸器、持続鎮静、血漿交換治療においては集中的な監視、早期対応が望まれる。
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